お題部屋

□100のお題
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恋人になって初めての放課後。




あなたは今日一緒に帰ろうって言ってくれた。









「日番谷くん…遅いなぁ」









深いため息をつきながら壁にもたれる。









「校門で待ってろ……って、言ってたよね?」









頭の中でその時の会話を思い出して確認すると、うんうんと頷いた。




だって……




忘れるはずない。




恋人になって、初めての日。




初めての会話。




いやでも頭に残ってる。









「ふふ……」









ふと、日番谷くんの顔を思い出して微笑んだ。




別に顔で好きになった訳ではないけど、




カッコいいことは否めない。









「なーに一人で笑ってんだよ?」









ずっと待っていた声。









「日番谷くん!」









俯いていた顔を上げる。









「ほら、乗れよ」









日番谷くんが顎で指したのは自転車だった。









「うん!」









大きく返事をして、自転車に乗り込む。




日番谷くんはチリン…とベルを鳴らすと自転車を走らせた。




さわやかな風が顔をかすめる。









「ねぇ、日番谷くん」









名前を呼ぶと、後ろを振り向かずに返事する声が聞こえた。




私は少し微笑むと、冷たい風を吸い込んだ。









「私ね、ずっと…ずっと日番谷くんと一緒にいたいなんてワガママ、言わない」









日番谷くんは黙ったまま聞いている。









「これから先、私達はいろんな困難に飲み込まれると思うの……。…そのせいで、私達が別れちゃうことになるかもしれない」









もう一度大きく息を吸い込む。









「けどね、私、今を大事にしたいの。今私が日番谷くんを好きな気持ちは本物だから」









そう、それだけは真実。









「だから…ね」









ギュっとあなたを抱きしめる。









「今だけは、一緒にいてね」









恥ずかしいから、




大きな声では言わないけど。









「大好き」









あなたに聞こえるぐらいの声でささやいた。




ふと前を見ると、




赤い耳が見えたのは、




気のせいじゃないよね――――?









願わくば、




少しでも長く




あなたとこの自転車に乗っていられますように。









END




→あとがき




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