長編・夢
□イケナイ恋心
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Feeling(フィーリング)
Timing(タイミング)
Happening(ハプニング)
この3つの要素が揃った時、
人は恋に落ちるんだって、
聞いたことがある。
それは裏を返すと、
いつだって
一瞬の[運命]な訳で‥。
そんな瞬間に
まさか赴任先で巡り会うなんて
思いもしなかったけど。
でも、私は素直に嬉しかった。
――あなたに出会えた運命を、
本当に今、
嬉しいと心から思ってる。
後は、私の気持ち次第なんだ―――‥
Prologue.
初めての赴任先、青城学園高校の校長室で、この時の私はまだ不安と同じくらい、キラキラした胸躍る期待でいっぱいだった。
そう、校長から自分が任される[2年C組]が、問題児の在籍クラスだと聞かされて、本当にその問題児たちを目の当たりにするまでは――‥。
「っっはぁ〜〜」
初の授業から帰りのホームルームまでの一通りを終えた私は、階段に差し掛かったところで、周りに誰も居ないことを確認してから、大きく、ひとつ、ため息をついた。
まいった‥これから半年以上もあるのに‥私、上手くやれるかしら…
本当なら充実した気持ちで抱えているはずの教材の束を、研究室へと運びながら、私の心は悲しくも既に後退気味。
こんなんじゃダメだと前向きに考えてみても、問題児が6人もいるクラスなんだもん‥弱気にだってなるわよ。
あーあ。赴任早々ツイてないなぁ。‥なんて。
後ろ向きな考え事をする時って、どうして自然と身体もうなだれるんだろ‥ホントこんな自分がやんなっちゃう。
…だけど。
問題児の中の1人‥
小早川…大樹(ダイキ)くんだっけ、
確かに無愛想な感じだったけど…
でも‥
『ちょっとだけ好みだったな』
ふっとそこまで思考が回ったところで、慌てて私はブンブンと首を横に振った。
私ってば何考えてるのよ! 相手は生徒よ生徒!!
そして私は教師なんだからっ
「よし!」
私は今の考えを吹っ切るため、小さく声に出して気合いを入れ直すと、歩みを止めていた階段の中腹から再び下り始めた。
「えっと、研究室はどっちだっけ‥」
辺りを見回しながら、私は最後の階段を下りようとした。
その時―――
グラッ
「きゃっ!」
バサバサッ
思いきり階段を踏み外してしまった。
「い、いたた‥‥足、ひねっちゃった…」
何とか大ケガはまぬがれたけど‥
「あ〜、教材までまきちらしちゃって私ってほんとドジ…」
転んでしまった自分に、さっき上げたばかりのテンションは一気に逆戻り。
もうっ 初日からこんな最悪な展開…、泣けてきちゃうじゃないっ‥
グイッ
「え?」
―――誰?
半分、涙目になっていた私は、急いで涙を拭うと、支え主を振り仰いだ。
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