Novel 〜vinegar mean〜
□01.―この街で―
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中はカラオケボックスであった
都内の中でも1、2番を争う安い店、そのため少々清潔とは言える環境ではなかった
その建物の中は数人の警官だけ
殺人や狂気的な事件が起こったわけではなさそうで、これといった損失はみあらない
ただ、それ以上に彼らを不快にさせるものがあった
「警部、宜しいですか?」
「なんだ?」
「さっきから気になっていたんですが、この変な臭いはなんですか?香水にしては変な香りのような感じなんですが………」
黒澤は急に立ち止まり、河野の方を向いて怪訝な顔をした
「お前、知らねぇのか?」
「えっ?」
するとまたすぐに黒澤は歩き始めた
「だったら鑑識からマスク貰っておけ。身のためだ」
訳もわからない河野は、頭にクエスチョンを浮かべて、ただただ黒澤の後についていった
二人は表の警官に言われた、3階の一番奥の部屋までくるとその扉を開けた
すると黒澤の顔に更に深い皺が刻まれた
訝しい表情(かお)のまま、言葉を発した
「おい、どうしてお前がここにいる。霧崎」
中にいたのは、1人の女性
歳は河野よりもいっていそうだが、その美貌は明らかに20代を表すもの
「あら酷い。人をまるで除け者を見るみたいな目で見るなんて」
そんなに気にしてないのか、黒澤の言葉を深く受け止めていない
「一課の方………じゃないですよね?」
ためらい気味に霧崎という女性に問掛けた
「こいつは………」
「はじめまして、組織犯罪対策第五課、霧崎よ。お供つけるなんて珍しいわねぇー、ゲンさん」
「仕事中だ、その名前で呼ぶな」
黒澤は機嫌が悪そうだったが、どうやら不穏な仲ではないようである
「警部のお知り合いだったんですね」
バツ悪そうに「まぁな」というだけだった
「ん?待てよ………組織犯罪対策の第五課って確か…………」
「あら、知らない?銃器、薬物専門の課よ。今回は後者の方………との混合だけど」
「えっ??」
そのとき始めて河野は部屋の状況を知る