ねがいぼし
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「銀さん、どうします?」
「どうするも何もしゃーねーだろ」
「でも空1人置いていくアルカ?!」
「んなわけねーだろ。下のババアんとこ預ける」
先程の電話の内容は久しぶりの依頼だった。
今までも空が来てから何度か依頼が入ることはあったが、どれも小さな依頼ばかりで、万事屋メンバー全員が出向くことはなかったし、近所なら空を連れて行くこともあった。
しかし今回の依頼は少しばかり厄介だ。
何せストーカー被害の依頼。話を聞くとどうも身近にいるゴリラよりもタチが悪いようだ。きっとストーカー野郎を直接ぶっ潰しに行かなくてはいけないだろう。そんな依頼に空を連れて行くわけにはいかない。
「おい空。ババアんとこ行くぞー」
「おとしぇしゃんとこ?わーい!」
飲んでいたいちご牛乳で、口ひげがついているのを見て、苦笑しながら服の裾で拭いてやる。
「じゃ、いくか」
***
「しょうがないねぇ、仕事が終わるまで預かってやるよ」
「悪りぃな。危険な目には合わせられねぇからな。」
空に目を向けると久しぶりに会ったタマと楽しそうに喋っている。
「おーい、空。銀さんちょっと仕事行ってくるわー」
「え?おしごと?」
きょとんとした顔で銀時を見ると、すぐさま側へ走り寄る。
「あぁ。お前はここで良い子で待ってろよ」
「かぎゅらとちんぱちは?」
「あいつらも一緒に行ってくる」
「じゃあ空もいく」
「空はだーめ」
「やだ、空もいく!」
銀時の足にぺったりと張り付くと、足を掴む手に力を込める。
「空、今日はだめなんだ。すぐ戻るから、な?」
「やだ!空もいっしょにいきたい…」
内心、お登勢になついている空なら喜んで手を振るだろうと思っていたのだが、くっついて離れない姿に頭をかく。
「空」
抱き上げて顔を見れば、目にはうっすらと涙がたまっている。
「悪ぃけど、今日は我慢な」
「…ふぇっ…えぇー」
「良い子で待ってな。ババア、頼むわ」
ぐずる空をお登勢に渡すと、泣き声がより大きくなった。
「いやああああ!ぎんちゃ、空もいっしょー!」
「……っ」
「つれてって!…ひっく…おいてかないで!やだやだやだあああ、ふえええーっ」
「ほら、銀時。早く行きな!」
「あぁ。行ってくらぁ」
お登勢に抱かれて泣き叫ぶ空の頭を優しく撫でると、銀時はそのまま出て行った。
「ぎんちゃ、ぎんちゃ!うわあああん!」
空の泣き声はスナックの外で待っていた新八と神楽の耳にも届いていた。
「空、めちゃくちゃ泣いてるネ…」
「ちょっと可哀想だね…」
「とっとと、仕事終わらせて帰るしかねーな」
「そうですね」
「おいて…ひっく…か、ない、でぇ…!」