ねがいぼし
□12
1ページ/3ページ
「うわあああーん!」
朝から空の大きな泣き声が万事屋に響き渡る。
「空ちゃん、こっちにおいでよ」
トイレの前で泣き叫ぶ空に新八が呆れたように声をかけた。
「ぎ、ぎんちゃー!」
トイレのドアをドンドン叩くと、ガチャリと鍵が開けられ、中からは何とも言えない顔をした銀時が出てきた。
「…お前ねぇ、トイレの前でそんなに泣かれたら、出るもんも出ねーよ。引っ込んじまっただろうが、どうしてくれんだコラ」
「うぅっ、空もいっしょはいる!」
「いや、無理だから!色々と無理だから!そんな状況でソフトクリーム製造出来ないからね!」
空をお登勢の所に預けたあの日から、空は銀時にべったり甘えるようになった。
少しでも銀時の姿が見えなくなると、家の中を泣きながら探す。
それが例えトイレでも。
「はぁ…原因は俺が置いてったことだって分かっちゃいるが、どうしたもんかねぇ」
膝の上には朝ご飯を食べる空。
今まで銀時の横に座って食べていたが、あの日以来膝の上に座って食べるようになった。
「ちょっと空さん、俺の足にいっぱい飯落ちてるんですけど」
「ん。あとでたべりゅ」
「いやいや違うから。ちゃんと茶碗持って食え」
「あい」
空の頭に顎を乗せると、大きな欠伸が1つ出た。
「今は甘えさせてあげたらいいんじゃないですか?きっとその内自分から離れていきますよ」
「離れていったら銀ちゃんの方が寂しくて泣くに決まってるネ」
「バカ言うな。俺は平気ですー」
「今だって、空が後ついてくるの可愛くてしょうがないって顔してるヨ。男ってほんと気持ち悪いネ。ってか銀ちゃんが気持ち悪いネ。空、気をつけるアルヨ」
「ん?」
朝ご飯を食べる手を止めて神楽の方を見る
「聞かんでいい」
「空、みんなとずっといっしょだよ!ねー?」
にこりと銀時の顔を見上げれば、銀時もつられて笑う
「だな。ってかお前顔汚ねっ!あーあー米粒だらけじゃねぇか」
「へへーっ」
笑うな、と頭を小突きつつも、顔についた米粒を取ると、そのまま自分の口へと運ぶ。
「ぎんちゃ、あとでこーえんいく?」
「あぁ。飯食ったら行くか」
「しゅべりだいとーぶらんことーおしゅなばとー」
なにしようかなーとニコニコしながら話す空を見て銀時は思う。
神楽の言うとおりだ。
まだ数週間だが、空が可愛くて仕方ねぇ。
離れて寂しくなるのは、確かに俺の方かもしれねぇな。