ねがいぼし
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「空ちゃーん、起きなさーい」
「……う?」
空が目を開けるとそこには慣れ親しんだ先生の姿があった。
「おはよう。今からおやつだから手洗っておいで」
「……せんせ」
「どうしたの?」
「…ぎんちゃ、どこ?」
「ぎんちゃん?誰のこと?」
慌てて寝転んでいた体を起こせば、そこはいつもの部屋の中。
いくら部屋を見渡しても銀時の姿はない。
「ぎ、ぎんちゃ…ふっ、ふぇー」
「あらあら、空ちゃん、夢でも見たのかな?」
先生が優しく空を抱き上げる。
久しぶりに感じる先生の温もりだが、やはり銀時のものとは違う。
ぎんちゃ、どこいったの?
いっしょにおひるねしてたのに…
「あら、空ちゃん。この傷どうしたの?」
指さされた場所は神楽を追いかけて転んだ時に出来たケガ。
「…ぐずっ…こけ、た」
「お昼寝の前?先生知らなかったわ。」
ぎんちゃにばんそーこーはってもらったのに…
ぎんちゃ、いない…
再び泣き出した空を先生がよしよしと撫でるが、今は銀時の事で頭がいっぱいで、泣き止むことは出来なかった。
***
「おい!空どうした?!」
「え?一緒に寝てたんじゃないんですか?」
リビングに入ると、新八と神楽が驚いた顔で俺を見た。
「いないアルカ?!」
「……あぁ」
「そんな?!僕たち、ずっとここにいましたけど、外にも出ていませんよ」
部屋にもいない、外にも出ていないとすれば、考えられるのはただ一つ。
元の世界に帰ったんだ
来たのだって突然だったんだ。
帰るのが突然であってもおかしくない。
「…帰ったんならいいじゃねぇか」
「こんないきなりなんて嫌ヨ!私まだまだ空と一緒にいたかったネ!」
「んなこと言ったって仕方ねぇじゃねぇか。あいつが帰る方法だって俺らじゃ分かんなかったんだからよ。」
「銀さん…」
「いずれは帰らなきゃなんなかったんだ。これで良かったんだよ」
そう、これで良かったんだ。
きっと今頃元の世界に帰っていつもの生活に戻るんだろう。
俺も今は騒いでるガキ共も、きっとすぐに、空が来る前の生活に戻っていくんだ。
何事もなかったかのように。
それでいい。