ねがいぼし
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久しぶりに4人で囲む食卓。
「あんね、空ね、ちんぱちのごあんしゅき!おいしーね」
「そ、そうかな。空ちゃんにそう言ってもらえて嬉しいよ」
「メガネが調子に乗るなよ」
「卵かけご飯しか作れない神楽ちゃんに言われたくないよ」
「かぎゅらもしゅき!」
「私も空大好きネ」
「えへへーっ」
新八と神楽が空と話す間、銀時だけが一人黙り混む。
「おい、」
「きのーはみんなどこいってたの?」
「昨日…アルカ?」
「だってみんないなかったもん」
空の発言に新八と神楽が頭に?マークを浮かべる。
昨日はみんな依頼のない万事屋でいつも通り、のんびりと過ごしていた。
空はいなかったが、空がいなくなったのは1週間前の事だ。
昨日1日の話ではない。
しかしそんな中、銀時はその言葉に核心を得ていた。
不思議だった事があった。
しかしこれでようやく謎が説けた。
「なぁ空」
「ん?」
「俺らがいなかったのは昨日だけだよな?」
「そーだよ?」
「銀さん、どういう事ですか?!」
新八の問いに、いつもとは違う真剣な表情で答える。
「推測でしかねぇが…たぶん俺らのいるこの世界と、空が本来いるべき世界では時間の進むスピードが違うみてぇだな」
「どういう事アルカ?」
「1週間前、万事屋の前の道でこいつ転んだ事覚えてるか?」
「そういえば…。顔と膝に怪我してましたね…ってあれ?!」
「傷がそのままネ!」
二人が驚いて空の傷を見る。
そこには1週間前と同じように真新しい傷があった。
本来、かすり傷程度の怪我ならば、1週間もあれば治っているはず。
しかし空の場合、まだ完全に瘡蓋になりきらない傷が残っていたのだ。
「あぁ、そういうことだ」
「そういうこと…って」
「この世界じゃ空は1週間いなかったが、空の世界ではたった1日しか経ってなかったってことだ」
「そんな…!」
信じられない事だが、実際に空の顔と膝に残っている新しい傷を見ると、信じるしかないようだ。
「ぎんちゃ、なんのおはなし?」
「空には難しい話」
「えー!空もおしえてー!」
「もっと大きくなったらな」
「空もーおっきいよ?」
「どこがだよ」
「だってごあんいーっぱいたべれりゅもん!」
頬にご飯粒をつけたまま、にこーっと笑う空に銀時はくしゃくしゃと頭を撫でた。
新八と神楽は、嬉しそうに笑う空を見つめたまま固まってしまっている。
「ま、今まで通りでいいじゃねぇか」
考えても仕方ねぇ。
なぜ空が突然元の世界に戻ったのかは分からねぇ。
時間の流れが違うことが分かったところで、どうすることも出来ねぇ。
なら、俺らは今まで通り、空との生活を送っていくだけだ。
「そうですね」
新八がふっと笑った
「何も変わらないアルナ!」
神楽はふっ切れたようにそう言うと、残りのご飯を一気にかきこんだ。
「ねーねー、なんのおはなしー!?」
「空はなんも気にしなくていいっつー話だ」
「ふーん?」
きっとその話すら分かってねぇだろうが、それでいい。
いいんだ。
いつかまた突然帰ってしまうかもしれない、そんな不安を抱えたまま過ごしたって楽しくねぇ。
なら、空も俺達も今まで通り笑って過ごしたい。
あ、そうだ。
「おい空」
「ん?」
「夜になったらまた星見っかー」
その言葉に空の顔がパァッと明るくなった。
「うん!」