ねがいぼし

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「ちんぱちー!」


さっきまで銀さんと洗面所にいた空ちゃんがこっちにやってきた。


「どうしたの?っていうか新八だからね。」

「ちんぱち?」

「し」

「し」

「そう。しんぱち」

「…ちんぱち」


あぁ、だめだ。
もういいや、ちんぱちで。
なんか嫌だけど空ちゃんだから許そう。


「で、どうしたの?」

「ごあんできたぁ?」

「まだだからもうちょっと待っててね」

「もーちょっと?」

「うん。そうだよ」


本当は今日のご飯当番は神楽ちゃんなんだけど、さすがに空ちゃんに卵かけご飯を食べさせる訳にはいかない。
って事で作ってるんだけど、何だろうこのやりづらさ。
空ちゃんが台所にしゃがみ込みずっと僕の方を見ている。


「空ちゃん、何してるの?」

「みてりゅ」

「…楽しい?」

「んーん。」


どうしよう、子どもって分からない…
子どもってみんなこうなのか、この子が少し変なのか。


「空、何してんだ?」


そこへ銀さんがやってきた。


「ちんぱちみてりゅ」

「止めとけ止めとけ、ちんぱち見たら目が悪くなるぞー」

「なるかァァァ!ってかあんたがちんぱちって言うのやめてくれません?!」


何で大の大人に、銀さんにそんな呼び方されなきゃいけないんだ!
当の銀さんは全く気にせず空ちゃんを呼んでいる。


「空、こっち来いって。」

「ちんぱちー」

「何、お前。空に餌付けしたのか。」

「するわけないじゃないですか!犬や猫じゃあるまいし。」

「ちんぱち」

「どうしたの?」

「ごあんできた?」

「………」


あー分かった。
この子は僕じゃなく、ご飯を待ってるんだ…。
それに銀さんも気付いたみたいで、やっぱ餌付けじゃねーかなんて言って笑っている。


「ご飯まだ出来ないよ。」

「ちょっとっていったのにもおー!」


ほっぺたを膨らませながら台所を出ていく空ちゃん。
そういや昼飯食ってないな、と銀さんが呟いた。





「かぎゅらー!ごあんまだよー!」

「ダメガネに期待したらだめアル。」

「空、おなかしゅいたー!」





空ちゃんのぐずる声が聞こえて、銀さんが早く飯作れよ、と言いながらリビングに向かった。




あー、もう帰ろうかな…


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