うさぎの飼い方

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山崎さんにに女中さんの所まで連れてきてもらうと、中から年配の女の人が出てきた。
その人に、中で紹介するからおいでと手をひかれる。
山崎さんはそれを見て、じゃ頑張ってねと自分の仕事に戻っていった。
後でお礼言わなくちゃ。



「これからお世話になります。よろしくお願いします!」


女中さん達にお辞儀をするとみんな、よろしくねと優しく笑ってくれた。

「あんた今日からここに来たんだろ?今日は疲れてるだろうから明日からでいいよ」

「えっ、でも…」

「その代わり、明日からたくさん働いてもらうからね!」

「はいっ!」


ガハハと笑う女中さん。
本当にここの人達は良い人が多い。

部屋でゆっくり休みな、そう言ってもらえたので、その言葉に甘えて部屋に戻ることにした。


みんなに挨拶をして廊下に出ると、山崎さんに連れてきてもらった廊下を一人で歩く。



…が、着かない。
似たような部屋が続く廊下。
曲がっても同じに見える。
私どこから来たっけ…?
あぁ迷った。


仕方なく壁にもたれて座り込めば本日2回目の迷子にため息がこぼれる。
迷ったって言っても所詮真選組の中だし、誰か通ってくれるよね…。


座り込んだ廊下は本当に人がいるのかと疑うほど静かだ。
はぁと息を吐けば肩の力が抜ける。

あぁ、私こんなに力が入っていたんだ。

少し痛くなった肩に初めて気付く。
人と話すのはこんなにも体力がいることなんだ。

しばらく目を閉じていると廊下の角から、誰かの足音が聞こえてきた。
耳をピクリと動かして、音に集中すれば、それは確実にこちらに近付いてくる。

立ち上がり音の人物を待っていると、現れたのは土方さんだった。


「あ」

「は?お前こんなとこで何してんだ?」


怖い。
そう思った。

最初に取り調べを受けたからだろうか。
眉間に寄せられたシワや開かれた瞳孔に身が竦む。




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