うさぎの飼い方

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部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、廊下に座り込んでいた女。
聞けばこの屯所内で迷ったとのこと。
屯所内で迷うなんてふざけてんのか。
は?と思わず声が漏れれば、体がビクリと強ばるのが分かった。

俺はまだこいつを信用していない。
だが廊下で突っ立っていられても邪魔だと、部屋まで案内する。
後ろを一定の間隔を空けてちょこちょこと着いてくるコイツは見た目とは裏腹にまだまだ幼い雰囲気が感じられた。

部屋の前まで案内し、俺も自分の部屋へと戻る。
こいつを俺の部屋の隣にしたのは、怪しい動きがあればすぐにでも叩き切ることが出来るからだ。
人の良すぎる大将や、副長の座を狙うためならば手段を選ばない部下を当てには出来ない。
真選組を破壊しようとやってきた天人が、今はもう真選組の仲間?
俺は認めねぇ。


書類を仕上げようと机の前に座り、煙草に火をつけて大きく吸い込む。
煙をゆっくり吐き出すと、書類を仕上げるために筆を取り、作業に集中した。





それからどのくらい経っただろうか。
最後の1枚を書き上げ、筆を置いたときには肩や首が痛くなっていた。
ぐっと背伸びをして、痛くなった首を回しながら部屋の襖を開ける。
煙草を吸いすぎたせいで白い煙の溜まった部屋が、それによって新鮮な空気に入れかえられていった。

廊下に出れば日はすっかり傾いている。
ふと隣の部屋が気になり視線を向けるが、物音ひとつしない部屋。
またどこかへ出掛けているのだろうか。
…また迷ってんじゃねぇだろうな。
そういえばもうすぐ夕飯の時間だ。
食堂にいるのかもしれない。

夕飯、と思い出すとなんだか急に腹が減ってきた。
食堂に向かえば、同じく腹を空かせた隊士達がぞろぞろと集まってきていた。



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