うさぎの飼い方
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「おぅ、トシ!書類は終わったのか?」
「あぁ。ったく総悟の野郎、始末書適当に書きやがって…結局全部書き直しだ」
「はっはっは!まぁ、あいつが上手く書類を書くとは思えん!」
「近藤さんはあいつに甘すぎだ」
「そういえば、未兎ちゃんはどうした?」
まだ来てないんだが、と続ける近藤さん。
そういえば見当たらない。
「みんなに今から紹介しようと思っていたんだが」
「もうすぐ来んだろ」
「食堂の場所は教えたんだがなぁ」
…もし食堂の場所を教えてもらっていたとして、あいつが辿り着けるだろうか。
自分の部屋にさえ帰れない方向音痴のあいつが。
「はぁ…探してくる」
「えっ?探すって、未兎ちゃんを?」
「あぁ」
近藤さんはまだあいつの方向音痴を知らないようだ。
重い腰を上げて、食堂を出た。
しかし廊下を歩けど、あいつは見つからない。
ったく、どこにいやがる。
つーか、なんで俺が迷子の捜索をしなきゃなんねーんだ。
イライラしながら屯所内を歩き回るが、一向に見つからない。
もしかして、とあいつの部屋の前で立ち止まった。
「おい、まだ部屋にいるのか」
廊下で声を上げるが返事はなし。
先程と同じく、やはり物音もしない。
いないのか?
「開けるぞ」
一言断りを入れて襖を開ければ、そこには着物を着たまま、畳にゴロンと寝転び熟睡している未兎の姿があった。
「気抜きすぎだろ…」
つい先程まで敵だと認識していた場所で、よくここまで無防備に眠れるもんだ。
「おい、起きろ」
軽く肩を叩くが、起きる気配は全くない。
仕方ねぇ、目覚めたら勝手に食堂来んだろ。
少しぐらい遅くても、きっと握り飯ぐらいは作ってもらえるはずだ。
もし、食堂まで辿り着けなくても俺は知らねぇ。
そん時は、そこら辺にいる誰かに聞きゃあいい。
ふぅ、とため息をついて立ち上がり部屋を後にした。
食堂に戻れば近藤さんの隣に総悟も座っていた。
「なんでィ、未兎を探しに行ったんじゃなかったんですかィ?」
「あぁ、部屋で寝てた」
「そうか、疲れてたのかもしれんなぁ」
「襲ったんですかィ?」
「アホか」
「寝てたんなら仕方ない。隊士達への紹介は、明日の朝にでもするか」
近藤さんのその一言で、俺は席に座り、食事に箸をつけた。
そう言えば、食堂に山崎の姿がない。
まだ調べているのだろうか。
あいつのことだ、きっと明日にはそれなりの報告書が出来上がっているはずだ。
山崎の報告次第じゃ、隊士達へ紹介する前に斬ることもありえるだろう。
今はまだ気を抜かずにいなければ。
改めて感じながら、食事にマヨネーズをぶっかけた。
「毎回毎回、見てて気持ち悪くなりまさァ」
「うるせぇ」