短編

□Reason for tears
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タイムリミットだ


結局何も思い出せなかった








目の前にいるのは死神代行黒崎一護。


「もう…いいか?」


なんで魂葬する本人がそんな悲しそうな顔をするんだ。
見ず知らずの私のために。










生きていた頃の記憶はない。
記憶がないから成仏する手立ても見つからない。
さまよっていたら死神に出会った。
どうやらこのままではホロウという化け物になってしまうらしい。

どうせ記憶はないのだから、すぐに魂葬されても構わなかった。
だから何も戸惑うことなく目を閉じた。


なのに、なぜか、魂葬される瞬間に大粒の涙が流れた。
その涙に死神の動きは止まった。



「どうした?」

「わ…かん…なっい」

「怖いか?」

「ちがっ…」


死神が困っているのが分かる。
ちがう、迷惑をかけたいわけじゃないのに。
魂葬されるのが嫌なわけじゃないのに。


「あっ…たの…な」

「ん?」

「私の生きてた証、あったのかな?」


魂葬されるのが嫌なわけじゃない。
生きていた証が分からない、自分自身が消えてなくなるのが怖かった。

死神は何も言わない。
ただ優しく私の頭を撫でた。
不器用な優しさにまた涙が溢れる。


「探してみるか?」

「え?」

「生きた証、探してみるか?虚になるまでには魂葬しなきゃなんねぇ。だから待ってやれる時間は3日間しかねぇけど探してみるか?」


涙でぐちゃぐちゃの顔でこくんと頷いた。




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