短編

□お願いティンカーベル
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「すごい雨だね」


朝起きたら外は大雨だった。
風が吹く音も聞こえる。


「でけぇ台風が近付いてるみてーだからな」

「え?!」

「えって何だよ。何日か前から散々結野アナがニュースで言ってたじゃねぇか」

「なっ!なんでもっと早く言ってくれないのよ!」

「はぁ?!」

「やばい、準備しなきゃ。今こそ私の計画が実行される時!」

「お前何する気だ、こら。どうせろくなことじゃねーんだからやめとけ。」

「よし!今ならいける!いくのよ夢子!」

「ちょ、聞いてる?銀さんの声聞こえてる?」

「銀ちゃん、私ちょっと行ってくる!」

「台風来てるって言ってんだろ!どこ、行く気だ!おい、夢子!」


銀ちゃんの止める声なんて無視して玄関へと急ぐ。


「あ、銀ちゃんの傘借りるね」

「自分の傘あんだろーが」

「誰も私を止められないぜ!きゃほーい!」

「……何なんだあいつは」

残ったのは静まり返った部屋と銀時の呆れた溜め息だけ。







しばらくすると夢子は傷だらけ、泥まみれ、ずぶ濡れの最悪な状態で壊れた傘を引きずって帰ってきた。



「聞くのも嫌だが一応聞いてやる。なにやらかしてきた?」

「…飛べなかった」

「……は?」

「…これだけ強い風が吹いてたら、傘で飛べるかと思ったんだけど、高い所から飛んだら落ちた。風で傘潰れた。」

「お前それ俺の傘」

「だから潰れてもいい傘持ってった」

「ぶっ飛ばすぞコノヤロー」


ったく…そう言って呆れた顔をしつつも銀ちゃんはバスタオルと救急箱を取りに行ってくれた。




お願いティンカーベル
(やっぱりティンカーベルの粉が必要だったのかな)
(必要なのはお前の頭だ)


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