短編

□夏バカ
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体がだるい
クラクラする
そういえばここ数日まともに食事してないな

ぐるぐると回る視界が気持ち悪くて、目を閉じながら思った。


あ、夏バテか。







「お前バカじゃねぇの」



バイト先でぶっ倒れた。
一人暮らしをしている私の緊急連絡先を、勝手に万事屋にしていたおかげで銀時が迎えに来てくれたらしい。
そのまま家へと連れて帰ってくれたようで、目を覚ませば呆れた銀時の顔があった。


「夏バテみたい」

「だろうな」

「…迷惑かけたから怒ってる?」

「お前のアホさに呆れてる」

「ごめんなさい」

「とりあえずなんか腹に入れろ」


しゅんとした私を見て銀時が、なんか作ってくると台所に移動する。
…あ、やばい。
また怒られる。

冷蔵庫を開ける音がして、きっとすぐに聞こえるであろう怒鳴り声を覚悟した。


「何だこれ?!ちょ、おいこら夢子ー!!」


あーやっぱりな。

すぐに寝室へと戻ってきた銀時の顔はやっぱり怒っていた。


「お前なんだよ、あの冷蔵庫の中身は」

「…あはっ」

「あはっじゃねぇよ、ぶっ飛ばすぞ」

「いやん、怖い」

「お前、冷蔵庫空っぽなんだけど?冷凍庫に大量のアイスしか入ってないんだけど?」

「この夏はアイスが私の主食です!」


その一言を言い切った後すぐに、グーで頭をゴチンと殴られた。


「いったぁ…」

「アイスは主食じゃねぇんだよ、バカヤロー。お前最近アイスしか食ってねぇだろ」

「だって暑いんだもん。アイス超美味しいんだもん。マイブームなんだもん!」

「だから夏バテになるんじゃねぇか」

ちょっと怒った声で銀時が言った。

だってご飯食べたくないんだもん、と呟けばハァと溜め息をついた銀時が立ち上がり玄関へと向かう。


「帰るの?」


怒ったのかな?


「バイク取りに行ってくる」

「…なんで?」

「お前今日からしばらく俺んち来い。ったく、お前一人にしてたらまたいつぶっ倒れるかわかんねぇからな。」


簡単に用意しとけよ、と言って銀時は出て行った。


心配…してくれたんだよね。

ちょっと嬉しい。

そんなこと言ったらきっとまた殴られるだろうから彼の前では言わないけれど。



夏バカ
(用意出来たか?)
(うん)
(え、なにこの大量の荷物!万事屋に住み込む気ですか?)
(え、違うの?)
ゴチン
(いたい!)




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