短編

□暑い日には冷たい麦茶を
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それを聞いたのはもう1日も終わりかけている夕方のことだった。


「え?」

「え、じゃないよ。だから今日は黒埼君の誕生日なんでしょ?」

「うっそだぁ!」

「だって井上さん達がお昼に屋上で、パンとジュースでお祝いしてたよ」


だって一護、誕生日なんて一言も言わなかった。
…誕生日の話なんてしたことないけど。

今日の放課後だって何も約束してない。
…付き合ってないけど。


「普通、好きな人の誕生日って一番に調べない?」


友達の呆れた声なんて、この際聞こえないフリをする。

もう時間ないじゃん。
あー、私バカだ…


「ったく!早く行ってきな!」


机に顔をつけてうなだれていると、友達にバシッと背中をたたかれた。


「でも…」

「でもじゃない!今すぐ行く!黒崎くんの誕生日は今日を逃したら来年までないんだからね!」


「うぅっ」

「早く行く!」

「は、はいっ!」


友達の顔があまりにも怖くて、その勢いに負けて思わず教室を飛び出した。
向かうはもちろん、隣のクラスの一護の所。




「一護!」

教室のドアを勢いよくあければ、窓際で帰る準備をしていた一護と目があった。


「どうした?」

「…いや、あのっ」


やばい、何にも考えてない…


「なんだよ」

「い、今から帰る?」

「あぁ。なんか用事か?」

「いや、別に。…あ、一緒に帰ろ」

「お前カバンは?」

「今から取ってくる!」


走ってきた廊下をまた戻り自分のカバンをひっつかむと一護の元へと急ぐ。
ちなみに友達は教室にはもういなかった。
薄情なやつめ…






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