短編

□一緒に遊びましょう
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「どんぐりころころ、どんぶりこー」


ポチャン


「おいけにはまって、ちゃーたいへん」


ポチャン


「どじょーがでてきて、こんにちはー」


ポチャン


「ぼっちゃん、いっちょにあちょびまちょー!」


ポチャン


「あれれー?」

「何してんでィ」


朝の会議が終わって、部屋に戻る途中、庭の池を除きこむように座る妹、夢子の姿を見つけた。


近づいてみれば、小さな手には大量のどんぐり。
先日、近くの公園で嬉しそうに拾っていた物だ。
それを歌いながら、一つずつ池に投げ入れている。
声をかければ、丸い、まるでどんぐりのような瞳が俺の姿を映し出した。


「あっ!おにーちゃま!かいぎ、おわったの?」


「あぁ。あんま池覗きこんでたら落ちるぜ」

「きよつけまちゅ!」

「で、何してたんでィ?」

「どじょーまってるの」

「は?」

「どんぐりがおいけにおっこちたら、どじょーがこんにちはするの」

「………」

「いっちょにあちょびたいからね、どんぐりおとしてるの」


子どもの発想にはついていけない。
突拍子もないことを言う。
だから子どもは嫌いだ。
いつもの俺なら無視して通りすぎるだろう。
しかし、夢子となれば話は別だ。
いくら子ども嫌いな俺でも、夢子は可愛くて仕方ねぇんだから。


「この池は真選組のもんだから、ドジョウは出てこねぇよ」

「えっ?!」


驚きと悲しみの表情をちらつかせているが、俺がわざわざ夢子を悲しませるわけがねぇ。


「裏山に池があるのはお前も知ってんだろィ?」

「うん」

「あそこにならドジョウがいるんでさァ」

「ほんと?!」

「あぁ。近所のどんぐりから聞いたからな」

「さすがおにーちゃま!どんぐりとおともだちなんてしゅごーい!」


ふふんっと得意気な顔を見せれば、今から連れてって!と可愛い顔でせがまれた。


「いいぜ。じゃあ土方の野郎に伝えてきなせェ」


俺が言ったら断られるが、こいつが言うと土方も断れないようで許可が出ることが多い。
死ね土方。


「わーい!じゃあ、おにーちゃままっててねー!」



たたたっと駆けていく姿を見ながら、そういや最近どこにも連れてってやってねぇことを思い出した。

よし、今日は1日一緒に遊んでやるか。



一緒に遊びましょう
(あっ!おにーちゃま!)
(なんでィ)
(おいけいくとき、おにーちゃまのおともだちのどんぐりも、つれてってあげよ!)
(…え)




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