短編

□まってました!
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少しでもレディ達に喜んでもらえるように、今日もキッチンで腕をふるう。
野郎共は正直どうでもいい。
ナミさんとロビンちゃん、そして夢子のために料理をするのだ。



最近ルフィが拾ってきた小さなレディ。
ルフィ曰く、親も家もなく、ひとりフラフラしていたらしい。

今までのこいつの生活が関係しているのか、夢子は食への興味が少ない。
何を作っても笑顔で食いはするが、結局途中で手が止まってしまう。
もちろん量も少なめに盛ってはいるが、それすら食べきれない。
当然体も小さく細いまま。
どうすれば完食してくれるのか、最近では俺の悩みの種になっている。



「昼飯出来たぞ」

「やったー!飯だ飯ー!」

「サンジ!今日の飯なんだ?」

「今日はホタテとツナのクリームパスタだ」

「うまそぉー!」


ルフィ達と魚釣りをしていた夢子を呼ぶと、声をあげて喜びキッチンへ駆けていったのは野郎共だけ。
それでも夢子は俺の顔を見ると、ちょこちょこと走ってきた。


「あのねあのね、おさかなみてたの」

「釣れたか?」

「ううん、にげちゃったの。おおきくてね、ぱちゃぱちゃーってしてた!」


興奮したように両手を広げて手を魚のヒレのように動かす夢子。
通りで頭や服が少し濡れてるわけだ。
水面で跳ねた魚の水しぶきがかかったんだろう。
手で少し濡れた髪を拭いてやれば、へらっと笑った。


「昼飯食いにいくぞ」

「…おなかすいてない」

「いつものことだろ」

「んー」

「食わねぇとでかくなれねぇぞ」

「うん」


普通ガキってのは、飯の時間になれば大喜びするもんだってのに…
呆れながらも夢子に向かって手を伸ばせば、なんの戸惑いもなく、小さな手がそれを掴む。
ゆっくり夢子のペースに合わせて歩きながら、キッチンへと向かった。


夢子を椅子に座らせ、子ども用の皿に少なめにパスタを盛る。
皿を持っていけば、夢子はルフィ達の食べっぷりを見てケラケラ笑っていた。


「ほら、お前のぶんだ」

「相変わらず少ねーなぁ!お前ちっこいんだからもっと食え!」

「るひー、いっぱいしゅごいね」

「おぅ!俺はいっぱい食べて強くなるからな!」

「夢子、あんたも早く食べなさい」

「いただきまーしゅ」

フォークを持って口に運ぶ夢子。


「おいしー!」


そうか、と笑って頭を撫でればまた一口パスタを口に運ぶ。
これが続いて完食してくれればいいのだが、そう上手くはいかない。


ルフィ達が食べ終わる頃、夢子の皿にはまだパスタが残っていた。
フォークを持つ手も止まっていて、何とか食べさせようとナミさんが必死になっている。


「ほらー、口開けて!」

「んー!まだおくちはいってる…」

「まだ入ってたの?」


ナミさんが諦めて俺の方を見た。
そんなナミさんも可愛い…なんて言ってる場合じゃない。
夢子はもぐもぐと口を動かしちゃいるが、さっきから口の中がなくならない。
これはもう限界だという合図。


「はぁ…ったくしゃーねぇな。夢子、その口の中のもんなくなったら終わりな」


こくんと頷いたのを確認すると、ナミさんは夢子の皿をルフィの前へと持っていった。
ルフィは当たり前のようにそれを口の中へとかきこむ。
食べ物は粗末にしない、と日頃から言っているからか、夢子の残した物はルフィが「もったいない」と食ってしまう。
夢子にとってはきつい1口もルフィにとっては3秒で胃の中だ。




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