短編

□見た目より愛情よ
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手作りってのは手間もかかるし、時間もかかるし、お金だってかかる。それならお店で買った方が安いし美味しい。でも、あえて手作りを選ぶって言うのは何よりも気持ちがこもってるからで、あなたのために作ったのよって事に感動して欲しいわけ。ねぇ、分かる?


なんて事をいけしゃあしゃあと語るこの女。未確認物体Xを片手に何偉そうに言ってやがんだ。せめて名称の分かる物を作りやがれ。


「で?何だよ、コレ?」

「見ての通りです」

「見て分かんねぇから聞いてんの。俺は作ってる最中に爆発するような食べ物は知りません。」

「爆発じゃないよ。ちょっとボンッて音がして煙が上がっただけ。少し焦げちゃったけどまぁ予想内の出来事よ。」

「人はそれを爆発って言うんだよ。大体何がちょっと焦げただよ。おめぇーこれもう炭じゃねぇか。」

「ひどっ!ケーキなのに!」

一体何を混ぜたらケーキが炭になるのか教えてほしい。更にコイツは満面の笑みで「お誕生日おめでとう」なんて言ってやがる。確かに嬉しい。嬉しいんだが、これを食べろと?いやいやいやいや、無理だって。さすがの俺でも炭はちょっと…


「銀ちゃん食べないの?」

「いや、あの、銀さん今あんま腹へってねぇなぁって…」

「そう…。銀ちゃんはあたしが作ったもの食べてくれないんだ…。あたし頑張ったのに…。」

「え??!!いや、ちょっ!!おい、泣くなって!!よし、食べる!!だから、なっ??泣くなって」


こうなったら意地でも食べてやる!そう意気込んで炭を口の中へと放り込んだ。きっと今まで生きてきた中で一番男らしい姿だと思う。


「うわ−!銀ちゃんありがとっ!ハッピーバースデー!」



見た目より愛情よ
(あたし、来年も頑張るからね!)
(や、もう気持ちだけで腹いっぱいだから。)

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