短編

□今から焼くのはあなたです
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あんなに甘いものは食べちゃ駄目だよって言ってたのに、パフェの週1も本当は止めてほしいって何回も言ったのに。
私の言う事聞いてたらこんな事にはならなかったのよ?
確かに私だって甘いものは大好きだし、毎日食べたいって気持ちも分からなくないけど、でも糖尿病の彼氏なんて嫌なんだから!
でも、もう手遅れ。ごめんね、銀ちゃん。



「これ、どうするアルか?」

「今から焼くのよ。」

「いつもぐーたらしてろくに給料も払わない罰ネ」

「本当にピンチになったら人って喋らなくなるのね」

「銀ちゃん、少しも動かないネ。ビビってるアルか?」

「え?銀ちゃん、ビビってんの?」

「………」

「でもさ、こうやってじっくり見るとホント死んだ魚みたいな目してるよね。」

「たまにしか輝かない目は死んだ目と一緒アルヨ。」

「ねぇ銀ちゃん、何も言わないならホントに焼いて食べちゃうよ?私、無視されるのは嫌いって知ってるでしょ?」






「おいおい、新八。あいつらは何してんだ?新たなイジメか?」

「今、銀さんと一緒に外から帰って来たんですから分かるはずないじゃないですか。とりあえず、2人そろって晩御飯の準備してるんじゃないんですか。」

「アレがか?アレが晩御飯の準備か?銀さんの心、ボロボロなんですけど」




外から帰って来ると、台所に立ってある物を見ながら俺の名前を呼ぶ居候の女2人。
一人は仮にも俺の彼女だ。




「あのさ、君達なにやってんの?」

「あれ、銀ちゃんが2人!どっちが本物?」

「お前それ本気で言ってんの?包丁片手に言うセリフじゃねぇだろ。お前が今から晩飯にしようとしてんのは魚だ、よく見ろ。」

「……あらホント。どっちも死んだ魚のような目してるから分かんなかった。ね、神楽ちゃん」

「ほんとほんと。全然気付かなかったアル。」

「ねぇ銀さん泣いていい?ねぇ。」

「あ−お腹へった。早く魚さばこーっと!」


そう言ってさっきまで「銀ちゃん」と呼んでいた魚の腸を取り出す。


あ、やべ。なんか腹痛くなって来た気する。



「ほんとに何してたんですか?」

「新八くん、おかえり。ちょっとしたイタズラよ。」

「イタズラ?」

「ねぇ、今日はご飯食べて帰る?」

「あ、はい。」

「今日は良い魚入ったって魚屋のおじさん言ってたから、きっと美味しいよ!」




まな板の上の魚
(昨日、さっちゃんと一緒にいるの見たんだから。)
(あれはあいつが勝手に…!え、もしかして焼いてる?やべ、超可愛い!)


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