短編
□悪魔の微笑み
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「すき」
「………」
「銀ちゃん、だいすき」
「………」
「あいしてる!」
「……そろそろ止めてくんない?」
「付き合ってくれたら止める」
「いやいや、お前と付き合ったら止めるどころか酷くなりそうなんだけど。」
「うん、そうかも。だってこんなに好きなんだもん!」
「……はぁ」
好きだ好きだと会うたびに、いやむしろ告白をするために毎日押しかけてくるこの女。
たまたま飲み屋で隣り合わせになり少し話をしただけの仲だったはずが、気付けば毎日万事屋へやって来ては告白されていた。
「ねぇ付き合ってよ」
「銀さん、結野アナにしか興味ねぇから。」
「あたし、料理も掃除も出来るし、それにおっぱいだってちゃんとあるよ!」
ほら、と胸元を自分ではだけさせる。
「だぁー!女がそんなことすんじゃねぇ!」
「照れてんの?やだ、銀ちゃん可愛い!そんなところも好き!」
あーもうこいつほんと帰ってくんねーかな…
ぎゅうぎゅう抱きついてくる夢子を引き離しこちらを向かせる。
「顔近い」と頬を赤らめる夢子は取り敢えず無視することにした。
「あのさ、わりぃけどお前がどれだけ告白してきても、お前とは付き合えねぇから。」
「…この先も?」
「そ。」
「…わかった。」
帰るね、と玄関に向かっていく姿をぼんやりと見つめていると扉に手をかけた夢子が振り向いた。
「ばいばい」
あまりにも綺麗に笑って言うもんだから思わず言葉を失ってしまった。
夢子が外の階段を降りる音を聞きながらこれでやっと静かになると思った。
なのに口から出たのは重い重いため息1つ。