追憶モラトリアム

□遊城十代の述懐
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俺はデュエルが好きだ。

互いに死力を尽くしてライフを削り合うスリル。
相手の一挙一動に気を配り、場の支配権を奪い合う緊張感。
その全てが好きだ。
何より、デュエルをしている時は俺は独りではない。
必ず相手がいる。
全ての意識、感情をデュエル―俺に注ぎ、俺に全てをぶつけてきてくれる相手が。
独りになることは嫌いだ。
デュエルができなくなるとか、そんな理由ではない。
独りになると、どうしようもなく不安になってくる。
普段、目を逸らして考えないようにしていることが心を蝕む。
大きな大きな闇が、俺の中を荒らす。
それが、何に起因するのか、俺は知っている。
知っているから目を逸らす。
直視すると、不安になって、心がぐらぐらして、自分ではない何かが語りかけてくる。
それは、自分自身の弱さだと、俺は知って、目を逸らす。
DAに来て、沢山の友達ができた。
沢山の事件に巻き込まれた。
俺はいつもその中心にいた。
中心にいて、先頭に立って、デュエルをしてきた。

俺はデュエルが好きだ。

だから請われるままに、流されるままに戦い、勝利してきた。
勝ち続けてきた。
俺が勝つとみんなが喜んで、俺の周りにはどんどん人が増えていった。
独りになる時間なんて、滅多にないくらいに。
だからなのか、俺の中の闇はどんどん、どんどん大きくなっていった。
みんなと一緒にいても、ふとした弾みに心は急激に冷えていく。

俺が勝てなくなったらどうなるのだろう――…?
デュエルに負けて、連戦連敗するようになったら、どうなるのだろう?

不安が胸を締め付ける。




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