アークティック校騒動記

□2、短くも濃い付き合いをしていても、やっぱり知らないこともある
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2、短くも濃い付き合いをしていても、やっぱり知らないこともある
―台風、到来


"「以上で、始業式を終了する」"

教頭の宣言と共に、一気に講堂の空気が緩む。
「んー、終わったぁー」
伸びをするヨハンに、シャルルは同意する。
「まったくだぜ。っあー、肩こるー」
最初は小さかったざわめきも、次第に大きくなってゆく。
「あれ?でもおかしいよ?移動の合図がない」
レオの指摘にヨハンも気づく。
「確かに…いつもなら移動が始まってるはず…――」
「おい、見ろよ…」
ルイスの言葉に、ヨハンは壇上の方を見る。
そこには壇上に登る担任の姿があった。

アドルフ・ルーデル――

ヨハンのクラスの担任であると同時に、このアークティック校のデュエル実技最高責任者を務めている人物である。
この辺りでは珍しい漆黒の髪に深紅の瞳な上に、いつも黒い教員用制服を身につけている。
生徒にも自分にも厳しい教師で、基本スパルタでドSなため、生徒は勿論、教師からも恐れられている。

"「黙れ、雑魚共」"

講堂が水を打ったように静かになる。
この教師に逆らうとどんな目に遭うかわからないためである。
ルーデルは静まり返った講堂を、さも当然とばかりに眺めると言った。
"「ふん、学習能力があるようでなによりだ。さて、お前達に吉報だ。本日より、本校からの留学生を受け入れることになった"」
生徒達がざわめく。
しかし、ルーデルが冷めた赤い目で睥睨すると途端に静まり返る。
"「筆記・実技共に本校一の生徒だ。この俺にも勝利する程の優秀なデュエリストだ」"
その言葉に場が一気にどよめく。
「あの死神に勝つって…どんな化け物だよ…」
シャルルが小声で呟くと、横にいるヨハンに話しかける。
「なぁ、ヨハン。心当たりある?」
本校に留学していたヨハンなら、ルーデルに勝てるデュエリストに心当たりがあるかもしれない。
ちなみにヨハンとルーデルの対戦成績は、ややヨハンに黒星が多い位である。
自分に負けても勝負を挑んでくるヨハンを面白がって、ルーデルはヨハンにこっそりプロデュエリストとのデュエルや大量の課題を課していたりする。
ちなみに、クラスメイト全員がルーデルの矛先が自分達に向かないよう、ヨハンを生贄にしていたりする。
知らぬは本人ばかり、とはまさにこのことである。
シャルルの問いにヨハンは少し悩んだ後、答える。
「あるにはあるけど…」
「けど?」
「あいつ、筆記は苦手そうだったしなぁ」
どこか遠い目をするヨハンに、シャルルは首をかしげる。



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