月奏アーネジェウ

□dawn of the kings ep5
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これで貴方は私のモノです


*月奏アーネジェウ*
dawn of the kings
ep5 ああ、愛しき日々のラプソディー 一葉



十代は名案だと満面の笑顔を浮かべて、ある提案を言い放つ。
ヨハンはぽかんと口を開け、目を見開き硬直する。
そして、思わず持っていた手札を全て取り落とした。

「ごめん。もう一度言ってくれないか?」



***


その頃、アテムは部屋で優雅にワインを飲んでいた。
ミント、コリアンダー、セイボリー、メリッサ、タイム、センナ、セージ。
海馬に無理を言って作らせたハーブ入りのワイン。
その郷愁を感じさせる味に、アテムは深く嘆息した。
と…
「ん?なんだ?」
天井から酷く慌ただしい音が聞こえてくる。
「―――!!!」
バンッと扉が勢いよく開けられる音が聞こえ、ばたばたと階段を駆け下りる音が外から聞こえてくる。

「Hilf!Lehrer!!!」

凄まじい騒音と共に、アテムの部屋にヨハンが駆けこんでくる。
「Er wird mich um Macht im Zimmer unterbringen!」
かなり動転しているのか、言語が母語のドイツ語になっている。
その表情はかなり必死で、ヨハンの状況がかなり切羽詰まっていることがわかる。
「Obwohl ich sage, daß ich es oft hasse!!!」
アテムは一応ドイツ語も修めているが、日用会話が出来る程度である。
早口で捲し立てられると流石に聞き取る事はできない。
「すまない、ヨハン。何を言っているのかわからない。英語か日本語で話してくれないか?」
アテムの言葉に、ヨハンは自分が母国語を話していた事に気づく。
ヨハンは大きく深呼吸して話し始める。
「実は…」
「ヨハーン」
十代がのんびりとした足取りで入ってくる。
「お前いきなりどうしたんだよ?デュエル放りだしてさ」
十代は不機嫌そうに、不思議そうに近づいてくる。
「どうしたもこうしたも…」
十代は首を傾げて不思議そうにしている。
埒が明かないと、その間にアテムは入る。
「一体どうしたんだ?ヨハンが慌てて駆け込んできただが…」
はっと、ヨハンが思い出したように叫ぶ。
「助けてください!先生!!」
「だから、何から?」
ヨハンの言葉に、十代は顔を曇らせる。
「そんなに嫌なのか…?」
悲しそうに言う十代に、ヨハンは思わず後ずさる。
「いや、それは、その…」
たじたじと、しどろもどろにヨハンは言葉に詰まる。
何が何だかわからないアテムは、眉を顰めて言った。
「だから理由を言ってくれ。それがわからないと対処のしようがない」
その問いに十代は答える。
「ヨハンが俺の部屋に泊まれば良いって言ったんだ。そうすれば夜遅くまでデュエルできるから…」
その返答にアテムは目を丸める。
次いで、口を押さえ、押し殺したように笑い始める。
「ククっ…それは…確かに…」
「先生!笑ってないでどうにかしてください!!」
ヨハンの言から、説得が不可能だったことがだいたい予想できる。



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