君の世界が終わる夜

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その日、彼は死んだ。彼は世界中を旅した。だから、名前がたくさんあった。


それはまさに眠るようにであった。彼が金色の目を閉じたとき、何とも心地がよかった。
そして気づけば、ふわりと浮かんで世界を見下ろしていた。
不思議である。
静かに、あまりにもゆっくりと世界が動く。
ふと、隣を見ると老人が立っていた。彼とは逆の、それでいて不釣り合いでない白い服に白い髪、色白で、長い白髭、背も高い。
老人が彼を見る。彼の背中をやわらかく押し、行っておいでと声をかけた。
振り返り、もう一度彼の瞳が老人を見つめた。その細い足で宙に一歩踏み出す。



黒猫が、一夜だけ世界に舞い戻った。



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