君の世界が終わる夜

□3.みじかいあいだ
1ページ/3ページ

「好きだったの?」

「嫌いだったよ」

男はそう言った。
女が尋ねる。

「今は?」

「今もさ。特に黒猫なんか不吉だしね」

「黒猫に熱い視線を送ってる人のセリフじゃないわね」

男はくすっと笑った。

「昔を思い出したのさ」

「猫が嫌いだったっていう昔?」

「あぁ。あの猫よりももっと、闇に溶けそうなほど黒い子猫がいたんだ」

「飼ってたの?」

「いいや。

…聞きたい?」

あら、と女は男の顔を見て笑った。

「聞いて欲しいんじゃなくて?」

「さぁね」
と、はぐらかしつつも男は話を始めた。

ここは、東の国の町のベンチである。天気は良く、青空は絵の具バケツをひっくり返したような、爽やかな色が広がっていた。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ