君の世界が終わる夜
□3.みじかいあいだ
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「好きだったの?」
「嫌いだったよ」
男はそう言った。
女が尋ねる。
「今は?」
「今もさ。特に黒猫なんか不吉だしね」
「黒猫に熱い視線を送ってる人のセリフじゃないわね」
男はくすっと笑った。
「昔を思い出したのさ」
「猫が嫌いだったっていう昔?」
「あぁ。あの猫よりももっと、闇に溶けそうなほど黒い子猫がいたんだ」
「飼ってたの?」
「いいや。
…聞きたい?」
あら、と女は男の顔を見て笑った。
「聞いて欲しいんじゃなくて?」
「さぁね」
と、はぐらかしつつも男は話を始めた。
ここは、東の国の町のベンチである。天気は良く、青空は絵の具バケツをひっくり返したような、爽やかな色が広がっていた。
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