穴城

□理由
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「はぁ、かえではほんに見た目を裏切るのう…」
今日も、何の前触れもなく佐助がからんできた。
昼食を取っていた時である。
「何?食べられないひがみ?」
「食べらぬ訳ではないんじゃて。味がのうて不味いんじゃ。他の五感はあるのにのう…」
かえでは無視して、おむすびを一口で食べた。
「そういうところが、裏切りじゃ!!」
「はぁ?そういうけどね、穴城の人はみんな見た目が役者みたいな奴でも、ばっさばっさ斬って呪ってしてんじゃん」
「もちろん、そういう意味でもあるが…大和撫子的容姿で、なんでこうがさつなんじゃ?」
がっかりしたようにため息までつけて、空中であぐらをかいて腕まで組んだ状態でかえでを見下ろした。輝く黒髪が見える。
「せっかく容姿は理想的じゃのに…」
ぎっと佐助を睨み、かえでは立ち上がった。
「うっさい、じじい!!100年前に死んでろ!」
と、微妙な言葉を残して食堂から消えた。佐助は宙に浮いたまま、懐かしそうに呟く。
「わしが死んだん、112年前じゃー」
「死後に死ねと言われても困るね…」と、斜め下から信が苦笑した。


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