ひと味
□確認
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「あんな」
関西弁の幸昌が呼び掛けた。別に、何かを形容したのでも、女の子の名前を言ったのでもない。
「何?」
呼び掛けられたみやのは、幸昌の方を見る。
二人は中庭のはしっこのベンチに座っていた。担任との進路相談(二者面談)の順番を待っている。二人の順番は連続だが、先のみやのでもあと30分以上待つから、友達も皆帰ったし、仲の良い二人で喋っていた。
その間の、よくある話の切れ間の沈黙。そんな時、幸昌が''あんな'を言った。
「俺さ、みやののこと好きやねんけど」
「…今、あたし告白されましたか?」
「されましたねぇ」
「この告白って、青春〜って感じの、好きですってやつよね?」
「なんなんそれ。青春〜以外の告白って、なんやねん」
「いや、私がやりました的な」
「…自首か?」
みやのは頷く。
「あほ」
「あの、幸昌、あたしが好きなの?」
「そう言ったやん」
「あたしに恋したの?」
「なんでもっかい聞くねん。しかもなんか言い方変えてるし」
質問に答えない幸昌に、みやのは黙ったままだ。
「…うん、お前に恋してる」
「お前って」
「みやのや」
「お店の名前みたいに言わないでよ。旅館でありそうじゃん」
「みやのちゃんですぅ」
「誰がみやのちゃんに恋してるの?」
一瞬、沈黙があった。
「初瀬幸昌が結城みやのに恋してんねん。好きやねん。めっちゃ好き」
「幸昌、あたしが好きなんだね」
「だからそう言ってるやんか!嫌ならはっきり…」
「じゃあ、あたしの彼氏になってくださいっ」
幸昌はちょっと赤くなった。
「…そんなん、もちのろんや」
→おまけ