君の世界が終わる夜

□1.さいしょのよる
2ページ/3ページ

広い部屋。高級な家具が並んでいる。
メアリーは電気をつけた。
「ね。懐かしい?あんまり変わってないでしょ」
「にゃー」
彼は鳴いた。猫にしては、妙に家に響くような声だった気がする。メアリーは金色の瞳を見つめた。

入ってきた扉が、おそるおそる開いた。
「お母さん…」
モデルのようにすらっとした美人で、目元がメアリーとそっくりだ。
「今、猫の声がしなかった?」
キティが帰ってきた、と言おうと思って彼を抱き上げた瞬間、また扉が開いた。
「今、猫の声がしなかったか?」
「お父さん」
メアリーは思わず笑ったが、夫婦はお互いを見て固まった。
結局、二人は仲が悪いのかと寂しくなった。
笑った私が馬鹿みたい。せっかく、キティが鳴いてくれたのに。…鳴いてくれた…?
「キティ、呼んでくれたの?」
腕の中の彼に、囁いた。きゅっと目を細めて、小さな舌でメアリーを舐めた。


キティの気遣いは、無駄にしたくない。早くしないと二人とも部屋に戻っちゃう。

「そうよ!キティが帰ってきたの!!」
彼を二人に見せる。
「まぁ。懐かしい!」
「帰ってくるとは…」
夫婦の注目は彼に移る。
すっとソファーに座って彼を膝の上に乗せると、両親も両隣に腰をおろした。
黒猫は三人の膝を行ったり来たりする。ぺろぺろと思うままに彼らを舐めた。



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ