君の世界が終わる夜
□2.ふねのなか
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彼は、とても好かれた。
最初はみんな船内に猫など、厄介なものが来たと思っていた。しかし、彼の振る舞いは賢いものだった。
話しかけると、金色の瞳が必ず目を見つめ返す。下手な人間よりも話をしっかり聞いてくれた。逆に彼が話すことはなかった。少しも鳴かない。ただ、小さな頭を手のひらに近づけてなめたり頬擦りしたりと、言葉よりも気持ちを語った。
船長に習い、彼はキャップと呼ばれた。
「キャップ、この船、どこに向かっているか知ってるか?」
首をかしげる。
「外国だ。あと二日東に向かって進むんだぜ」
黒猫は目を細め、微かに頷くようなしぐさをした。
「ところで船長。なんで、キャップという名前なんですか」
と、一人が尋ねた。
「自分も一つ聞きたいです、どこで出会ったんですか」
その問いに、船長は懐かしそうな顔をした。
「ずっと前なんだ」
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