短編
□†Kiss Me…†
1ページ/4ページ
〜シエル〜
「おい、いい加減に機嫌を直せ。」
『…。』
そっぽを向いて返答しない、愛おしい彼女。
彼女がこんなにも機嫌が悪い理由。
それは先程まで来ていたエリザベスのせい。
「ったく、ほら。こっち向け。」
前に回り込み顎を掴んで顔を上げさせると、口を尖らせて眉間に皺を寄せる彼女がいた。
『…リジー、帰ったの?』
「ああ。」
漸く口をきいてくれた事に安堵した…
『これ……なに?』
…のも、つかの間。
僕の胸倉を掴む彼女が言う[これ]とは、エリザベスに無理矢理巻かれた首元のリボン。
もちろんひどいレースの奴だ。
『これ…リジーからよね…?』
「…υ」
しまった…
外して来るのを忘れていた…
しかし今更後悔しても遅い事。
僕はひとつため息をつきながら言った。
「仕方ないだろう。エリザベスは名前だけとは言え婚約者。そいつが[かわいいシエル]が好きだと言って持ってくるプレゼントを突き返す訳にもいくまい。」
僕がそう言うと、彼女は黙って俯いてしまった。
と、次の瞬間。
『…!?』
ぐっと両手で握られた例のリボン。
その手に力が込められ、前に勢いよく傾く僕の身体。
―…チュッ
…そして、合わさった唇。
頭が真っ白の僕は目を丸くする。
目の前には瞳に涙を溜めて僕を睨む愛おしい彼女。
『リジーは[かわいいシエル]が好きでも、私はどんなシエルだって好きなんだから…っ!!』
……嗚呼、最高の殺し文句。
赤くなる顔を悟られまいと、僕は彼女を強く抱きしめた。
†嫉妬キス†
好きだから
妬いちゃうんだ