短編

□†Kiss Me…†
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〜セバスチャン〜


「まったく…何故あの人達は簡単な仕事さえもこなせないのでしょう…」


[あの人達]とは悪魔である私にここまでストレスを与える人間、つまりあの三馬鹿。

私はイライラとしながら早歩きで廊下を進み、バンッと勢いよく中庭の扉を開けた。

するとそこには…


『あ、セバスチャン。』


花に囲まれこちらに笑いかける坊ちゃんの妹君。

彼女は駆け寄ってくると私を見上げ、そしてご自分の眉間を指差しながら問い掛ける。


『どうしたの?セバスチャン。眉間に皺が寄ってるわ。何か悩み事でもあるの?』


心配そうな表情を見せる彼女がとても愛おしく感じられた。

私はフッと小さく微笑むとその場にひざまづき彼女と同じ目線になった。


「ご心配ありがとうございます。悩み事などではありません。…少し疲れただけですので。」


そう答えてにこりと笑ってみせた。


「そうなの…?
…そうだわ!疲れてるセバスチャンに魔法をかけてあげる!」

「魔…?」


彼女の言葉の意味が理解出来ずに固まる。

唯一理解出来たのは近付いてくる彼女の顔。

そして…合わさった唇。


「……。」


彼女の顔が離れた今では、今度は彼女の行動が理解出来ずにただ目を見開くのみ。


『これ、魔法よ。元気が出る魔法。』


少し照れたような、赤い彼女の顔。

今度はその顔にくぎづけで。

私はさっきからずっと固まったまま動けない。




†魔法キス†

彼女の魔法は

どんな契約より
強力かもしれない



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