短編
□†猫舌と悪魔†
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セバスチャンさんのその一言に皆が一斉に私を見た。
そんな事にも気付かない私は一生懸命カップにむかって息を吹き掛けていた。
『ふ〜っ、ふ〜〜っ!!』
私が息を吹き掛ける度に湯気が向こう側に勢いよく移動する。
それでもまだまだ湯気は出てくるので私も負けじと息を吹き続ける。
「おいおい嬢ちゃん、そんなに一生懸命何してんだ?」
『ふ〜……へ?』
バルドが横から覗き込んできて顔をあげると、漸く皆が私を見ている事に気付いた。
『え…何ってお茶を冷ましてるんですよ?』
さも当たり前のように私が答える。
え…だって熱い物を冷ます時息吹き掛けるのって、当たり前だよね…?
「それは分かるけど、このお茶飲み頃な熱さだよ〜?」
「そんなに熱々じゃないですだよ!」
首を傾げるフィニとメイリンに私は苦笑いをした。
『私、猫舌だから…』
「そうかぁ。嬢ちゃんが猫舌ってなんか可愛いなぁ。」
『ちょ、バルドさん痛い〜』
バルドさんは豪快に笑いながら私の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「それにしてもこの熱さも駄目だなんて、極度の猫舌だね!」
「まるで本物の猫みたいですだ!」
あはは、と三人が笑い飛ばす。
「『(だって本当に猫ですから……)』」
そんな中、私とセバスチャンさんだけが乾いた笑いを漏らしていた。