短編

風邪の看病
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* 風邪の看病 *





「へ〜っくしゅ!!えくしゅっ!!」

「ほら、陛下。ちゃんと毛布をかぶって大人しく寝ててくださいよ」

「…コンラッド…」

「ぁ、そうでした。すみませんユーリ…」

「最初っからそう呼べよ…名付け親〜」




今の季節は冬。

こんな寒い時期にぉれはコッチ(眞魔国)にスタツアしてやってきた。

おまけに今回は出迎えの準備が整ってなかったらしく、

びしょぬれの状態で数分待たされた。

…で、風邪をひいた。






「ぁ〜。暇だぁ〜体がダルィ〜頭痛ぃかも〜……」

「ューリ、氷枕とかいりますか?」

「…ぇ?コッチにもあるの?氷枕なんて…」

「いえ、ありませんけど。必要なら作りますけど」

「いや…いらないからぃぃよ。それより、ぉ腹が少し空いたかな…?」

「そうですか。じゃ、ちょっと何か食べる物と薬を持ってくるので、

 大人しく待っててくださいね?」





コンラッドはそう言うとぉれの横に座って髪を撫でていた手を止め、

ベッドから腰を浮かしてドアの方へ歩いていった。

だけど、




「……コンラッド…」




なぜか寂しい気持ちが湧いてきて思わずコンラッドの名を呼んでしまった。



「ユーリ…どうしましたか?」

「ぁ……なんでもない……ごめん」

「……大丈夫。すぐ戻ってくるんで安心してください」

「分かった…大人しく待ってるから…は、早く帰って来いよな…」



ぉれはそう言うと毛布を頭からかぶり、赤くなった顔を隠した。

別に熱のせいで赤くなってる訳じゃない…。

コンラッドはそんな俺を見て微笑むと静かに部屋を出ていった。



「はぁぁ〜何やってんだろ、ぉれ…」



コンラッドが部屋を出ていくと、ぉれはそっと布団から顔を出して呟いた。

まさか小学生じゃあるまいし…寂しいと思うなんて。




「…風邪のせいかな…」







○●○しかし数十分経ってもコンラッドは帰ってこなかった。○●○




「何かあったのかな…?」

ぉれは心配になってベッドから出ると、ふらつく体を動かしコンラッドを探しに行くことにした。

…が、やっぱり熱がだいぶ高いのか長く立っていると目眩がしてきた。



「〜っ………はぁ…。やっぱキツいかも…」



ドアまで辿り着いたが、仕方なく床を少しずつ這いながらベッドに戻ることにした。

ベッドに戻っている途中でタイミング悪くコンラッドが帰ってきた。

そして床に転がっているぉれを見て驚いた顔をした。



「ユーリ…こんなところでなにしてるんですか?」

「ぁ、コンラッドおかえり。遅かったな…」

「もしかして俺を捜しに行こうとしてたんですか?

 …あれほど静かに待ってるようにって言ったのに」

「…だってコンラッドが遅いから何かあったのかと……ごめん」



ぉれが反省しているとコンラッドはしょうがないですね。と軽く笑った。

そしてぉれの体を簡単に持ち上げたかと思うとベッドに向かって歩き出した。



「うわっ!!コンラッド〜歩けるから下ろして!!」

「ダメです。また倒れたらどうするんですか?」

「いや、大丈夫だから…恥ずかしいんだよっ!!」

「へーきですよ。部屋には誰もいませんからvv」

「誰もいなくても恥ずかしーの!!」




そんな会話をしながらコンラッドはさっさとぉれをベッドまで運び、静かに寝かせてくれた。

「さ、しっかり毛布をかぶって。大人しく寝ててください」

「む〜…分かったょ…」

「ぁ、それとも何か食べますか?地球で言うリンゴのようなものがありますが…」

「リンゴがぁるんだぁ。…ぅん食べるよ。だってコンラッドを折角持ってきてくれたんだし」

「じゃぁ、皮を剥くのでちょっと待っててくださいね」

「へ〜…コンラッドってなんでも出来るんだな…」

「まぁ、一応これくらいは」



−ショリショリショリ……



静かな部屋の中には、コンラッドのリンゴの皮を剥く音だけが響いて、

ぉれはなぜか安心してそのまま眠気に誘われるがまま夢の世界へと旅立ってしまった。





〜数分後〜





「…ユーリ?」



リンゴの皮を剥き終わって、ふと気が付くと



「スー…スー…スー…」



ユーリは静かな寝息を立てていた。

コンラッドはくすりと笑うとユーリの髪を梳きながら小さく呟いた。

「早く良くなってキャッチボール、しましょうね…」






*****−次の朝−*****





ユーリが目を覚ますと、すぐ隣で突っ伏したままコンラッドが寝息を立てていた。



「……わぁ、コンラッドが寝てるとこ久しぶりに見たなぁ。

やっぱ疲れてんのかな〜…ってぉれの看病してたせいじゃん!!」



ユーリは呟きながら自分のかぶっていた布団を1枚、コンラッドの背にかけてやった。



「うわ…すごい寝入ってる…」



いつもはすぐに目を覚ますコンラッドだが今日はなぜか目を覚まさないほど寝入っていた。

ユーリはおかしいな…と思ったが




「やっぱ疲れすぎてんのかな」




そう思ってあえて考えなかった。







**−数時間後−**






「へくしゅっ…くしゅん」

「ぁ〜移しちゃったみたいだ……ごめんコンラッド」

「ぃぇ、ユーリにもらったものですから逆に嬉しいくらいですよ」

「ぁはははは…(ギュンターみたいだな)…でも風邪はちょっとね…」

「だってユーリが看病してくれるんでしょう?」

「ぅ…まぁ……するけど…っていうかさせて下さい」

コンラッドに風邪を移しちゃったらしく、ぉれの体調はすっかり良くなっていた。

まぁ、さすがの獅子も風邪には弱かったらしい。

かくして、ぉれはコンラッドの看病という執務をサボるための口実をゲットし、

コンラッドと野球の話で盛り上がっていたのだった。









次の日、コンラッドの風邪は治るはずもなく、おれはというと…

執務をサボった罰なのか再び風邪をひいてしまったのだった。

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