短編

絶望という日
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* 絶望という日 *





「………コンラッド、ごめん」




「ユ、ユーリ……今、何て?」






ユーリが相談があると言って夜中の12時を過ぎた頃、
1人で部屋にやってきた。


外じゃ寒いからと部屋の中に入れてあげて。


イスに向かい合うように座って。






真剣な顔をしたユーリの口から聞かされた言葉は……






あまりにも残酷だった。















「おれ、ヨザックとつき合うことにしたんだ」





嬉しそうに話すユーリにショックを受けた。






「だから、護衛もヨザックにしてもらうよ。
 これからはコンラッドの好きにしていいからな?」






続けられた言葉に胸が締め付けられたようにズキリと痛んだ。











「……分かり、ました。護衛はヨザックに任せます……。
 あいつなら安心して任せられる」





精一杯の微笑みを浮かべてユーリに言う。





「突然でごめんな、コンラッド。
 今まで護衛してくれてありがと………」




「いえ…そんなこと気にしてませんよ。
 さ、もう遅いですし。部屋まで送りますよ」





引き留めたいと思う気持ちが胸の中にあったが、あえて気づかないふりをして。





「……あ、部屋までは1人で帰れるから大丈夫だよ」



「ですが……」





せめて最後くらいは、とユーリを説得し部屋まで送ることになった。








「そーいえばさ、何度か眠れない夜にコンラッドの部屋に行ったりしたよな。
 で、毎回帰り道はコンラッドが送ってくれて…」





部屋に戻る道の途中、ずっと黙っていた俺にユーリが懐かしそうに話を始めた。





「えぇ…そんなこともありましたね」






ユーリはヨザックを選んだのだ、と納得できない自分に無理矢理言い聞かせて。




微笑みながら





「ヨザックの部屋は俺の部屋より遠いですからね。
 行く時は気を付けてくださいね?」




そう付け加えた。





「あ、そっか……遠いんだったっけな。うん、気を付けるよ」





笑顔で答えるユーリに胸が痛む。










あっと言う間に部屋につき、

おやすみ、と言い残し部屋に入ったユーリに俺は返事も返せずに………

閉まってしまったドアの前で呆然と1人、俺は立ちつくしていた。














――次の日の朝。







昨日はあれから眠れずにずっと起きていた。

本当ならばユーリを起こしに行く時間だ。



しかし、彼のそばに居ることが出来ない今…それは無意味なことで。





「………ユーリ…」





ずっとそばに居れると思っていた。



誰にも渡したくない大切な人―。







( これからはコンラッドの好きにしていいからな )







昨日のユーリの言葉が頭から離れない。





「……どうして………」




どうしてユーリはヨザックを選んだのか……。

俺はそういう対象として見られていなかったのか。

ユーリにとって俺はただの名付け親に過ぎなかった。



俺はこれから何のために生きていけばいいのだろうか………。












朝食の時間になったが、さすがにユーリに会う勇気がなく。

自分の部屋に運ばせた。





その後は何もすることもなく。

窓辺に置いた椅子に腰かけて、ぼんやりと外を眺めていた。






しかし、頭に浮かんでくるのはユーリとの思い出ばかり。






自称気味に笑いながら

浮かんでくる思いを振り払い………

頬を伝う涙は拭いても拭いても止まらなかった。











―コンコンッ





「コンラート閣下。夕食の準備が整いましたが、どうなさいますか?」





夕食を知らせにメイドが来るまで日が暮れていることにまったく気づかなかった。





「……部屋でとるよ」






赤くなった目で行けば、きっとユーリが心配してしまうから。






朝食と同様、料理を部屋に運ばせたが……

手をつけないまま調理場に返した。





とても食べる気にはなれなかった。










再び窓際の椅子に腰かけ、真っ暗になった空を見てため息をつく。





「俺はいつまでこんな小さな事で落ち込んでいるんだ………」





ポツリと呟いた言葉は夜の風に流されて消えていった。


















真夜中も過ぎたであろう時間に




―コンコンコンッ。




ドアをノックする音がしたので、

こんな時間に誰だと思いつつも椅子から立ち上がり、

歩いていこうとした瞬間………。






「……っ!?」





突然体中の力が抜け、視界は真っ白になり。

俺はそのまま倒れてしまった。






「…っ!!……コンラッドッ!?」






ノックをしていた人物が、俺の異変に気付いたらしい。

慌ててドアを開けて部屋に入ってくる音が聞こえた。





(………誰だ?)





体中が痺れていて、声も出すことも、目を開けることも出来ない。


その人物は今にも泣きそうな声で俺の名前を必死に呼んでいる。






(………ユーリ……?)






いつもと違うユーリの焦った声に気づいたのか。

誰かは分からないが、部屋に何人か入ってきたのが分かった。






倒れるときにどこかで頭を打ったのかズキズキと痛んだ。




「…っ!?怪我をしてるのか?
 今、治癒をしてやるから……目を…開けてくれよ……コンラッド…」





頭に温かいものを感じながら俺はそのまま意識を失った。
















俺は夢を見ていた。



とてもよく晴れた空の下。

ユーリとよく一緒に行った丘。



楽しそうに笑っているユーリと、それを見て楽しそうに微笑んでいる……俺と思われる男。




幸せな空気がそこらへんに溢れていた。





(なんでそんなに嬉しそうにできるんだ…)





笑顔の自分に問いかけるが、こちらの姿や声は届かないのか嬉しそうに微笑み続けている。







しかし、ユーリを見つめていたかと思うと、一瞬、(過去の)俺は哀しそうな顔をする。





俺はその理由は聞かなくても分かるような気がした。







上司と部下の関係─。







近くにいるけど、想いを伝えることができない出来ない歯痒さ…。







今ならハッキリと伝えることができる。







ユーリを愛していると………。







ユーリがヨザックと付き合うと聞いて、やっと分かった。







俺は上下関係のせいにしてこの気持ちを隠してきたが、

本当はただユーリの返事が怖くて聞けなかっただけなのだと。






(………ユーリ…)






今すぐ会って抱きしめたい……。




















「……コンラッド…?」




自分を呼ぶ声がして、俺はそっと目を開けた。


目の前には安心したように微笑むユーリの姿。




きっとずっと泣いていたのだろう……目が赤くなっていて痛々しかった。



「…ユーリッ!!!」




俺は起きあがると同時にユーリを引き寄せるとギュッと抱きしめた。





「わっ!?……コ、コンラッド??
 どうしたんだよ、悪い夢でも見たのか?」





よしよしと背中をポンポンと優しく叩いてくれるユーリに………




俺はずっと言いたかった言葉を口に出す。






「ユーリ……」


「ん、どうしたの?」



「……あなたを、愛しています」


「…………へ?コ、コ、コンラッド????」




明らかに動揺しているユーリから体を離し、向き合ってから再度、ゆっくりと伝える。





「俺は、ユーリのことを愛しています。
 ヨザックとの間を邪魔するつもりはないけど、
 この想いを消すことができないんです…………」








気が付いたら目から涙が零れていた。



ユーリにこんな姿を見られたくなかったのに……




泣いている俺を見たユーリは慌て始める。




「コ、コンラッドさん?………非常に言いにくいんだけどさ」




困ったような顔をしながら話してくる。

そりゃそうだろう。

ヨザックという恋人がいるのだから。

続きの言葉を聞きたくなかったが………







「今日…ぁ、昨日か。………何の日か知ってる?」





「…………え?」







断られると思っていたのに…続けられた言葉は何故か疑問系。



しかもユーリは微笑んでいる。







わけが分からずボ〜ッとしていると





「じゃぁ、昨日は何日?」




「……4月1日……っ……ま、まさか!?」




「そ、昨日はエイプリルフール。
 地球にいったことのあるコンラッドなら分かるよな?」





「…………………………」




「……コンラッド?」




「そうだったのか…………よかっ…痛っ!!」




ほっとした瞬間、頭がズキリと痛んだ。





「あぁ。ほら、寝てなくちゃ……。
 倒れたときに頭をイスの角で打って、出血してたんだから」





あの時はビックリしたよ。と言いながらベッドへと寝かせてくれる。





「部屋に行ってノックをすれば、凄い音がするし。
 慌てて部屋に入ればコンラッドが倒れてるし。
 ……おれ、パニックになっちゃてさ」




「そーいえば、俺はなんで……」




「睡眠不足と空腹のせいだってギーゼラさんが言ってたぞ」
 まぁ、おれの嘘のせいなんだけど………」




ごめんな?と付け加えるユーリに苦笑すると

肩を小突かれた。







「本当に悩んだんだぞ?おれのせいで……目を覚まさなかっ…たらって………」






泣きそうになるのを必死に堪えながら言うユーリに





「大丈夫ですよ。それに俺はこうしてちゃんと生きてますから」





にっこり微笑みながら伝えると、ありがとぅ。なんて返事が返ってきた。











「あのさ、コンラッドが……さっき言ってたことなんだけどさ……」






顔を真っ赤にしながら続けられた言葉に驚いた。









「おれも……コンラッドのこと、愛してるよ…」




なんて言うから…


不覚にも止めたはずの涙がまた溢れてきて。








「あはっ…コンラッドってば、今日泣いてばっかじゃん…」




なんて嬉しそうに笑って言うユーリに





「……俺を泣かせたのは誰ですか?」





なんて意地悪く聞いてみれば





「う……すみません」





うなだれるユーリが可愛くて。





















「じゃ、罰として俺とず〜っと一緒にいてくださいね?」





「…ばっ////……言われなくたって離れないよ」


















ねぇ、ユーリ。



何があってもずっと俺と一緒にいてくださいね?


















俺、ウェラー卿コンラートは



第27代魔王、ユーリ陛下に忠誠と愛を誓います。





― ぉしまぃ ―





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あとがき


最後まで読んでくださってぁりがとぅござぃました♪♪♪
えっと、内容的には『シリアス→甘め』を目指して書いたんですけど。

どうだったですかね????
えぇ。反省する点はたくさんあるんですが……突っ込まんといて下さい☆笑

誤字・脱字は拍手にてこっそりと教えて下さい☆



2007.**.**

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