短編

記憶の中で
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* 記憶の中で *





たまにボ〜ッとしてると昔の記憶が蘇ってくる時があるんだ。





「……田っ…………村っ………村田ってばっ!!!!!」


「……えっ……あぁ。渋谷、どうしたの?そんなに怖い顔して…」


「そりゃぁ何度も呼んでシカトされりゃぁ怒るだろ?」


「え?そんなに僕のこと呼んでた?
 ………ぁはは、最近耳が遠くってさ〜。
 そろそろ耳鼻科にも行かなきゃね〜」


「どんだけ耳が遠いんだよっ!!……ていうか、"にも"って言ったよな。
 他にも病院とか行ってんのかよ……村田、お前いったい何歳よ…」


「まぁね、眼科とか整骨院とか皮膚科とか歯科とか渋谷家とか……
 いろいろありすぎて覚えきれないよ」


「うわ……大変だな……ん?
 今、おれん家も入ってなかったか!?」


「さぁ、そんなの言ったかな?」


「……やっぱいいです」


「で、何か用だったんじゃないの?」


「あっ、そうそう!!今度の日曜日、試合があるからさ。
 マネージャーの仕事、頼むな!」


「オッケ〜。
 そのかわり、今度のサッカーの試合僕に付き合ってよ?」


「分かった。じゃ、また明日な〜!!」




渋谷が教室から出ていくと、僕は再び1人の世界に入る。


他のとこを考えて思い出さないようにするんだけど、どうしても沸き上がってくるんだ。



………昔の魂の持ち主であった小さな男の子の記憶が――。



人がたくさん死んでいる中、自分1人が生きてて…。

誰に声をかけても返事が返ってこない。

母親も父親も兄弟も……みな動かないまま。

(………どうして……?)

そこに敵の兵士が1人やってきて………怯える男の子に向けて銃を放った。

そこで記憶は途絶えてしまう。







「……っ!? ぁ、ぁれ? なんで涙なんかが……」




眼鏡をはずして涙を拭っていると後ろから物音がした。


慌てて後ろを振り返ると、僕の席のすぐ後ろに人が座っていた。


眼鏡をかけようと慌てるとその人物が話しかけてきた。




「ちょっ、慌てなくても大丈夫だって!!!!!
 …………む、村田……大丈夫か??」


「…し、渋谷!? さっき帰ったんじゃ…?」


「暗い顔して悩んでる友達をほったらかしでおれが帰ると思うか?
 涙を流すなんて一体何を悩んでるんだよ??」


「いや…別に……何でもないよっ!!!」


「じゃぁ、なんで大賢者様が人の気配に気づかずに泣いてんだよ」


「それは……別に君には関係のないこ………渋谷?」


「…れは、ただお前の支えになってやりたいだけなんだ……
 いっつもお前に助けてもらってばっかで……
 お前が悩んでるときに助けてやれないなんて友達失格だよな…」


「し、渋……」


「ごめっ、おれ帰るっ!!!」




渋谷は泣きそうな顔をしてそのまま教室から出て行ってしまった。


追いかけようとも考えたんだけど、かける言葉がきっと見つからないから。


今はそっとしておいた方がきっといい……。




「……はぁ。これじゃダメだょね……。
 これはただの夢であって、僕のことじゃない。
 ………昔の記憶なだけ…………なのにっ…」




だけど、こんなに悲しくなるなんて。


人は怖いと思って死んでしまった昔の記憶…。


人は優しくて温かいものだと知らずに逝ってしまった。


僕はこんなにも幸せなのに。




「この幸せが突然消えてしまいそうで怖い……」




ときどき考えてしまう。


今、生きている世界は夢の中で目が覚めたらまた1人ぼっちなのではないか、と……。


あまりにも幸せすぎて不安になるんだ。




「ははっ……そんな泣いてたら眞王が聞いて呆れるぞ?
 ……大丈夫。村田はちゃんとこの世界に存在しているからさ」


「渋谷……」




さっき走っていったはずの渋谷が教室に入ってきた。


渋谷のことだから心配で戻ってきてくれてたんだろう。




「なんなら試しにおれがほっぺたを摘んでやろうか?」




にっこりと笑ってくる渋谷にしばし考えた後……僕は答えた。




「大丈夫だよ。渋谷に頼んだら思いっきり摘まれそうだしね。
 ………渋谷、ぁりがとう」


「なっ…!! おれだってちゃんと力加減できるっての!
 ………やっぱ村田は笑ってた方がいいな」


「………え?」


「うぅん、何でもないよ。
 ほら、村田……帰ろうぜっ!! 外とかもう真っ暗だぞ?」


「うわ、ホントだ。 じゃ、帰ろっか〜」








ありがとう、渋谷。


僕はちゃんと生きてるって教えてくれて。


やっぱり君は人々を温かく照らしてくれる太陽なんだね。


僕も君を支えられる月になるよ。



ずっとそばでいつまでも永遠に…………。





― ぉしまぃ ―





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あとがき


最後まで読んでくださってぁりがとぅござぃました♪♪♪


突発的にポンと書いちゃったので微妙ですがね。
やっぱり内容がシリアス傾向に走っていきました☆滝汗
一応ハッピーエンドっぽく終わらしたいという希望もあるのですが…。

力不足で上手く書けませぬ★

村田さんの記憶はどんな風に残ってるんでしょうね?
やっぱ幸せでいっぱいなのかな…?
そうだと良いなぁ〜と思った管理人なのでした♪



2007.05.03

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