短編

* Happy Birthday *
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……俺の可愛い弟が眞魔国に行ったまま帰ってこない。

正確に言えば、向こうに行って45分が経とうとしている。
いくらユーリの魔力にムラがあってタイムラグが出るにしろ帰りが遅い。

そんな俺はさっきから自分の部屋と風呂場をウロウロしている。
お袋が心配しなくても帰ってくるわよ〜なんて笑ってるが
別に俺は心配をしている訳じゃない…いや、心配しているのかな。(苦笑

結局、ユーリは2時間が経っても帰ってこなかった。



―ピリリリッ

深夜になったので寝ようかと思った頃、メールが届いた。


「…こんな時間にボブからメール?」


不思議に思いながら読んだらメールの内容にはこうだった。


「やっほー、渋谷のお兄さん!
 こんな時間でも起きてるみたいだね。
 良かったらちょっと外に出てきてくんない?
          渋谷の友達の村田健よりvv」


「なんで弟のお友達から? しかも外に出る……っ!?」


窓から外を見ればボブと手を振る村田の姿があった。
慌てて俺は外へと飛び出した。


「なんでこんな時間に…しかもボブまでいるとは驚いたな」

「…ユーリに頼まれたから手伝いに来たんだ」

「そっ!渋谷が…あぁ、弟さんの方がお兄さんを連れて来いってvv」


ユーリが俺を連れてくるようにボブに頼んだ…?
そんな頭に疑問符を浮かべる俺の手を
村田は引っ張って歩き、数分後に公園に着いた。


「ほら、渋谷が待ってるから行きますよっ!
 じゃあ後は頼んだよ、ボブ!」

「…あぁ、気をつけて行ってくるがいい」

「ちょっ、待てって……わっ!!!」


そのまま輝く噴水へと飛び込んだ。



―ザバァッ!

勢いよく水から顔を出せば何度か来たことのある景色があり

此方は今から夕方なのか空が暗くなり始めていた。


「ここは、確か…」

「眞王廟だよ、お兄ちゃん!」


場所の名前を思い出そうと考えていると
後ろから聞き慣れた声とともに頭にバスタオルがかけられた。

……ん?今お兄ちゃんって呼ばれなかったか?
いや、ユーリに限ってそれはないかと首を振って噴水から出る。


「ユーリ、いったいどういうつもりだ?」

「まぁ説明は後でするから、今は着替えてきなよ」

「……あ、あぁ」


渡された着替えを持って巫女さんの案内で浴場に向かった。

……まったく。
普段はこちらの世界に干渉するなと怒るくせに自分から呼ぶとは。
いったいユーリは何を考えているのか…
そんな考えが頭の中をグルグル回っていたが答えは思い浮かばず。

風呂から出て着替えるとユーリとタンデムで眞魔国へと向かった。


「…突然呼んでごめんな、お兄ちゃん」

「っ!…べ、別に可愛い弟の為なら深夜でも平気だ。気にしなくてもいい」


やっぱり"お兄ちゃん"と俺のことを呼んでるみたいだ。
心の中で喜んでいるのをバレないように必死に平静を装って答えた。

これはドッキリかもしれないと自分に言い聞かせる。

色々と考えているうちに血盟城に着いた。


「おかえり、ショーリ。元気そうで何よりだ」

「あぁ、ウェラー卿。あんたも元気そうだな」

「陛下に元気を貰っているからな」

「ほらほら、話は後にして早く行こうぜ!」


コンラートと話をしているとユーリが話を止めに割ってきた。


「行くって何処にだ…?」

「いいから!早く行こうぜ、お兄ちゃん!」

「……あ、あぁ…」


手を引かれてどんどん城の奥へと入っていく。

さっきから"お兄ちゃん"って…何か様子がおかしい。


「ほら、お兄ちゃん!この突き当たりにある部屋、見えるだろ?」

「…あぁ、見えるが」

「今から5分後にあの部屋に入って来いよっ!」

「ちょ、ユーリっ!?」


5分後に入ってこいと言い残してユーリは走っていった。
相変わらず慌ただしい弟だ。

とりあえず言われた通りに5分間待つために窓から見える景色を眺めた。

そろそろ5分経つか…あの部屋に、入るんだったよな。
ここは城の中だし、ユーリが言った事だ、危険はないだろう。

ドアをノックして俺は部屋に入った。
部屋の中は真っ暗で何も見えなかったが、人の気配がした。


「………ユーリ?」


不安になって名前を呼んだ瞬間、何処からともなく歌が始まった。
次第に周りも明るくなり、部屋の中が見えるようになった。


「ハッピーバースデー!」


歌が終わると同時にワァッと部屋が騒がしくなった。

……ハッピーバースデー…誰の?


「なんて顔してんだよ、お兄ちゃん!」

「そっか…今日は俺の誕生日か」

「まさか忘れてたとか?」

「あぁ、すっかり忘れてた」


ユーリがこっちの世界に呼んだのはこのためだったのか。

普段は俺から独立しようと避けてたし、嫌われたのかと思っていた。


「……ありがとう」

「わっ!? どうして泣くんだよ、お兄ちゃん!」

「…嬉しくても涙は出るんだよ」

「そっか。誕生日おめでとう、お兄ちゃん!」

「ありがとう、ゆーちゃん!」


それから眞魔国の皆に祝福されたりプレゼントを貰ったりで
こんなにたくさんの人に祝福される誕生日は初めてでビックリした。




「少し疲れたんじゃないか、ショーリ?」

「…あぁ、少しだけ疲れた」


パーティーが終わり人も減り始めた部屋のバルコニーで
星を眺めているとウェラー卿が声をかけてきた。


「でも陛下は今日のために皆に頼んで準備をしてきたんだ」

「分かってる、ユーリは俺の弟だからな」

「ショーリは良い弟を持って幸せ者だな。あ、これは俺からのプレゼントだ」


会話の途中で渡されたプレゼント。
それは地球にもある野球で使うバットとグローブだった。


「こちらの世界で陛下が作った野球チームがあるんだ」

「まったく…あいつは野球バカだからな…」

「陛下のチームにぜひ、ショーリも入ってやってくれ」

「……あぁ、分かった」


スポーツなんて普段はしないが可愛い弟の為なら
お兄ちゃんは頑張って野球をやってやるさ!





次の日の朝、ユーリが起こしに部屋にやってきたが


「ほら、早く起きないと朝食食べ逃すぞ、勝利っ!」

「お兄ちゃんと呼べ、ゆーちゃん!…昨日はあんなに呼んでくれたのに…」


悲しげに言えば、顔を赤くしながら"そんなの呼べるかっ!!"と
言い残してユーリは部屋から走り去っていった。

いつも通りの呼び方で少しだけがっかりしたけど
昨日は誕生日だったから呼んでくれてたんだって分かってた。



とても素敵な誕生日をプレゼントしてもらった。

それだけで俺は幸せだった。




おしまい
.




勝ちゃんの誕生日小説、初めて書いたぁー^^*

まぁ、書けて良かったvv
コンラッドとの絡みが多かったのはマニメで喋ってたから☆

しかし、誕生日ネタがそろそろ尽きてきた為、内容が被り始めてる←

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