貴族な兄、庶民な弟

□似ていて似てない双子
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跡部邸の一室で服装や髪形は違うが全く同じ顔、姿勢で本を読んでいる二人がいた。
ページをめくるスピードも同じで不気味としか言いようのない二人。
この二人、双子で意図としなくとも、似すぎている。

「なぁ、景吾」
「……なんだ」
「この小説、つまんねー」
「アーン、俺様が薦めるモノがつまんねーはずねーだろうが」
「あ、だから、つまんねーのかもしんねーな」
「誠吾」
「冗談だ。純粋に俺に合わないだけ」

互いに読み終わった小説を机に置き、会話をする二人。
ほんの少しだが、誠吾の声は跡部よりも高い。
とはいえ、低くしたら跡部と変わらない。
そんな二人の大きく違う所は中身と言ってもいいだろう。
跡部は洋を好み、誠吾は和を好むという感じで面白いほど反対になっている。
だから、互いに薦める本がつまらないと思ってしまうことは今に始まった事ではない。
だが、似ている点も勿論ある。
ただ、違う点の方が多いため、そちらのほうが目立ってしまうのだ。

「まあいい。それで、今日はどうするつもりだ?」
「んー、景吾と試合はするけど、泊まらない」
「母上が残念がるな」
「そーだね。でも、今度、泊まるから大丈夫じゃないかな。つーか、落ち着かないんだよな」
「お前がそう思うのは勝手だが、俺様の弟ってこと忘れんじゃねーぞ」
「ハハ、忘れねーし。だって、鏡見るたび、実感するからね」

同じ顔だからさ、と続けると跡部と誠吾はフッと同時に笑みを零した。

「なあ、試合しよーぜ」
「ああ、そうだな。どうせ、お前のことだ。何か、この後あるんだろ」
「ああ、今日は特売日だからな」

当然とばかりににこやかに返された言葉に跡部は額を抑えつつ、どんどん庶民化していく弟に溜息を落とした。
同じ血が流れているはずなのにこうも正反対になるとはと。











―――――
序章的な?
簡単に二人の関係を書きたかっただけなのです。
だから、こんなにも短い。
ちなみに誠吾君は本を読むためだけに実家に帰ることが多いのです。



では

10/06/13

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