#2

□yes
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――彼女が、夜中、こっそりと立てた、




何処かへ向かう音。




情事の終わりに就いた、浅い眠りから、醒める。




ひたひたとしていた、足音が止むと、




冷やされた小さなプラスチック箱のトビラが、開閉される。




真夜中は、静かで、殆ど何も見えない分、些細な音でも、判ってしまう。




……ゴクリ、と彼女の喉を潤す、僅かなモノでさえ。



今度は、ベッドに戻る、足音がして、



足取りがさっきより、慎重になったのも、



シーツが擦れる音で俺の隣に戻ったのも、




――君が奏でる、全ての音が、手に取るように判ってしまう。




…そんな、彼女が今、自分の隣に居るという安心感。




再び眠りに就ける、スパイスだな、と思った、




――次の、瞬間、




首筋に感じる、彼女の長い髪、口唇の柔らかさと、




軽く立てられた歯の痛み。



彼女が、何をしたのか、直ぐにわかったのは、




先刻、同じ様に俺が、何度も、何度も、したから。




――もう寝てるフリなんかやめて、彼女を不意に襲ってやろうか、と思ったけど、




……我慢。




互いが、付けた、互いが自分のモノである、シルシ。


幾らでも欲しくなる、痛みの跡。




――君は、これで、フェアにしたかったんだろ?




今は、彼女に、仕返しが出来た喜び、感じさせてやらないと、な。




……だから今は、ゆっくり、眠りな?




でも、次に目覚めた時が最後。




君がくっきりと、付けた所有印に、驚いたフリ、して、




――直ぐに、仕返し。




一日、此処から離して、やらない。




触れ合うのは、長ければ、長い程、いいだろ?




――全てを俺の前で晒し続けて、その問いに、イエスと答える迄、




……君を、離すつもりは、全然ないから。




#目覚めれば、最後。



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