#5

□甘い香り
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―――彼は、いつでも、





「 甘い香り 」



#1







……カチャリ、コトッ。



(………ん?)




――さっき迄、違うセカイに飛んでいた、イシキが、醒めかける。




――カチャ、カチャ、



………小さい、金属音?



――トン、トン、トン



………何か、切ってる音?



「………かな。」



――低く、小さく、呟く、声、




――コトン、ジュワッ



焼く、音。




暫くすると、イイ匂いがして、




………何か、作ってるのかな?




「あ。」と、



今度は、ハッキリ聞こえて、




――間髪入れずに、



ガシャン!




………完全に、目が醒めて、




――どうしたの?と、起き抜けの声で、聞くと、




彼は、慌てた様子で、おはようと言い、




――苦笑いして、小さく、



「……朝飯、作ろうと思ったんだけど。」




「――え?」




……今度は、素っ頓狂な声を、上げてしまって、




シーツを巻いただけの姿で、慌てて、キッチンに向かうと、




……床に、無残に散ってしまった、目玉焼きを、



……やっちまった、と座り込んで、呟く彼を見て、



ほんのちょっと、格好悪いのが、何か、可愛くて。




――ワタシは、彼のカオを覗き込んで、



「……ね、一緒に、作ろっか?」




―――そう言えば、




うん、と言う、返事の代わり、



……オデコに、キス。




――ワザと音を立てて、
口唇を離し、




――よろしく、とちょっと恥ずかしそうに、呟いた。


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