#5
□甘い香り
1ページ/2ページ
―――彼は、いつでも、
「 甘い香り 」
#1
……カチャリ、コトッ。
(………ん?)
――さっき迄、違うセカイに飛んでいた、イシキが、醒めかける。
――カチャ、カチャ、
………小さい、金属音?
――トン、トン、トン
………何か、切ってる音?
「………かな。」
――低く、小さく、呟く、声、
――コトン、ジュワッ
焼く、音。
暫くすると、イイ匂いがして、
………何か、作ってるのかな?
「あ。」と、
今度は、ハッキリ聞こえて、
――間髪入れずに、
ガシャン!
………完全に、目が醒めて、
――どうしたの?と、起き抜けの声で、聞くと、
彼は、慌てた様子で、おはようと言い、
――苦笑いして、小さく、
「……朝飯、作ろうと思ったんだけど。」
「――え?」
……今度は、素っ頓狂な声を、上げてしまって、
シーツを巻いただけの姿で、慌てて、キッチンに向かうと、
……床に、無残に散ってしまった、目玉焼きを、
……やっちまった、と座り込んで、呟く彼を見て、
ほんのちょっと、格好悪いのが、何か、可愛くて。
――ワタシは、彼のカオを覗き込んで、
「……ね、一緒に、作ろっか?」
―――そう言えば、
うん、と言う、返事の代わり、
……オデコに、キス。
――ワザと音を立てて、
口唇を離し、
――よろしく、とちょっと恥ずかしそうに、呟いた。