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□華
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美しい。美しい。美しい。


生まれてより、何度も周りから囁かれた言葉。


そんな言葉など要らなかった。才など要らなかった。






美しさや賢さ、−−砕けぬ矜持に、なんの価値があろうか。




<華>




暗い。ここがもう少し明るかったら、少しは気分もましになるだろうに。



最早聞き慣れてしまった。無機質で、それでいてどこか粘着質な響きを持つ水の音。


「ぅ、あ・・・っ!」


突き上げられて、ビクリと跳ねる体。見開かれ、揺れる水面の瞳。

撓らせたしなやかな背に、新たな華を咲かせる執着心の強い主を責めるような瞳で見れば、にぃと吊り上る口端。

「どうした。まだいけるだろう。」

そう囁かれるのも、一体何度目か。何度達しようとも飽きる事無く自分を責め立てるゼウスに、ユダはいい加減倦怠感と厭きれを感じていた。

「・・・・ふっ。」

ず、と自分の中から引き抜かれる生暖かいゼウスの欲望。やっと終わったのかと思うより早く、再び一気に貫かれる。

「ぅぁっ!ぁ、ぁあ、あ−−−−・・!!」

ぞくぞくと背を這い上がってくる快感に、肌が粟立つ。脳髄まで突き抜けるような、光が駆け巡るような。

達する寸前の、足の裏に電気が流れるような感覚。痙攣する四肢に、絶えず自己主張をする己自身。腹につきそうな程勃ち上がったそれに、目も眩むような羞恥が込み上げる。


貪欲に自分を貪るゼウスを腹立しさも含めて思い切り締め付けると、ゼウスのくぐもった声が聞こえる。


ざまぁない−−−。


長きにおいて絶えず快感を与え続けられたユダは、疲弊し、精神を消費させながらも、ゼウスに対する反抗心は失っていなかった。意志の強さで荒れ狂う水面に暗い笑みを浮かべるゼウスを映し、ユダは快楽に震えながらも不敵に笑った。


掴まれる紅い髪。絹のようなそれは、ゼウスの白い指に映え、ユダを不快な気持ちにさせた。



自分とゼウスが繋がっている。仲間がそれを知ったら、一体どんな表情をするのだろうか−−。



自分を哀れむか。軽蔑するか。ゼウスに憤るか。


どれも、耐え難い屈辱だ。






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