がんぜなき陰陽師 短編2
□カラフルボール
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「――クーラーが、壊れた」
そう絶望的な表情で呟いた六合に、紅蓮はそれがどうしたと呆れ気味に目をすがめた。
【カラフルボール】
熱いのは平気な方だという自覚がある。
そして自分以外の人間からしたら、最近の気温が異常であるという事も。
「六合、……おい」
ゆっさゆっさと同居人の肩を揺するが、彼はぐでっとソファにもたれかかって動かない。
長い鳶色の髪は自分が結んでやったが、それでも随分暑そうに見える。いっそ切ってしまえば楽になるだろうに。
「いい加減にしろ、もう昼だぞ。お前朝からなにも食べてないだろうが!」
思わず怒鳴るが、六合は目を閉じたまま。ただの屍のようだ。
夏バテにも程がある。紅蓮はため息を吐き、キッチンに向かう。
六合は昨日の夜も素麺しか食べなかった。このままでは体に悪い。
冷蔵庫を開ければ、ひやりと冷気が頬を撫でる。クーラーの風のようだ。
今日の夕方にはクーラーの修理業者が来る。それまでの辛抱だ。
紅蓮は冷凍庫から取り出したそれを六合の元に持って行き、その閉じられたら唇に押し当てた。
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