双花焔恋(少陰長編)

□連
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 さっさと踊れ、この屑共が。


 そう冷たい瞳で見下ろされ、下僕達は全身を震わせた。



「どうした? 燐のようになるのが恐ろしいか」



 主は微笑みを浮かべたまま、己の足元にひれ伏す妖を踏みつけた。

 くぐもった悲鳴をあげた妖――燐は、原型すら留めていないが、元は長い濃紺の髪に鮮やかな金色の瞳をしていた。

 だが端整なその容姿は醜くただれ、彼が焼かれた炎の凄まじさを表している。


 主は笑みに陰を忍ばせ、くつくつと肩を震わせた。燐を踏みつける足をぐりぐりと動かし、そのぐちゃぐちゃとした感触にうっとりと紫水晶の瞳が潤む。


「なぜ恐れる。あの美しい炎に焼かれるのだぞ? 貴様らは燐の足元にも及ばないからな、きっと一瞬で消してくれる。――ああ、きっと、一面の紅蓮(べにはす)の園が見られる!」


 感極まった表情で叫び、主は燐を更に踏みつけた。哀れなほど泣く手負いの妖に、下僕達の震えは止まらない。


「お前達を一人消す度に、あ奴はどんな顔をするのだろうな? また涙を流すか、戸惑うか、それとも恐怖するか? どれもこれもが、愛おしくてたまらない」


 とろけきったその顔に、己の足元でもがく燐を気遣う余裕はない。ただただ求めるあまり、下僕の一人をひねり潰したことにすら気づかなかった。






 
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