双花焔恋(少陰長編)

□燃
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 邸の結界の外で、何匹かの妖と神将が戦う気配がする。


 晴明は重い表情で、目の前に横たわる紅蓮を見つめている。

 自室に昌浩を呼んですぐに妖からの襲撃があり、紅蓮が苦しみはじめたらしい。

 晴明はすぐに六合に紅蓮を運ばせた。部屋の周りに幾重にも結界を張り、紅蓮の神気を洩らすまいと神経を尖らせる。


 しばらく苦しみ抜いた末、紅蓮は浅い呼吸を繰り返しぐったりとしている。眠っているのを先ほど確認した。


「紅蓮……」


 痛ましげに顔を歪め、昌浩が紅蓮の額に張りついた髪をどかしていた。

 その視線が晴明に向き、物言いたげに歪む。


 晴明は胸につっかえる重石をなんとか飲み下し、眠る紅蓮を見下ろす。


「人も神も変わらぬものじゃ。突然引き合って、運命のように恋をすることがある。――あの神と紅蓮がそうだったのかは、わしにはわからんが」

「……神?」


 聞き返す末孫に、晴明は深く頷いた。

 あの時、彼らがお互いになにを思ったのかはわからない。

 晴明が見たそれは、ただの恋ではないように思えた。


 何故なら、




「神殺しの神。――以前高於加美神からお借りしたあの炎の持ち主が、再び黄泉から帰ってきたのじゃ」




 彼らはあの時、ただ寒がる子供に見えたから。





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