双花焔恋(少陰長編)

□裂
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 びくりと、彼の愛しい魂が震えたのがわかった。


 自分の魂の欠片が爆ぜたのが伝わってくる。

 

 わかるか、と影は笑った。



 お前の中にある俺の魂が、戻りたいと暴れているのを。

 その魂が見せるものを、お前は知らない。



 命を奪われて、愛しい者の中にあった自分の存在すら消されてしまった。その悲憤を、俺は忘れていない。


 人間風情にかけられた術で、お前は俺を忘れたままでいるのか?

 



 揺れろ、揺れろ。

 眠る愛しい記憶たち。

 軋む別れの記憶たち。




 ああ、と影は恍惚のままに腕を広げた。




 忘れないで、思い出して。



 この腕に抱いたぬくもりを、俺だけの幻想にしないでくれ。




 そっと触れた肩は、まだ寒そうに見えた。






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