その他Novel

□ギャルソンの笑顔
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朝のジョギングを終えた幸村がシャワーと手洗いをすませリビングに帰ってくると、既に政宗が朝食を作って席に座って待っていた。
その手には新聞。


「今日も美味しそうですね。」

「………ふん。
早く席につけ。
飯が冷めるじゃろう。」


幸村の言葉に読み終わった新聞を綺麗に畳んで横の椅子に放りながら政宗が少しぶっきらぼうに返す。
でも、返答がぶっきらぼうなのは照れ隠しなのを幸村は知っているので、別段気にせずいつも通り微笑みながら幸村は席についた。
そして二人同時に手を合わせて、朝食を食べ始める。
今日の朝食はスクランブルエッグにベーコン、ハニートーストにサラダと冷たいカボチャスープ。
そして牛乳だ。
ジョギングの後の火照る身体を考慮して、さり気なく冷たい物を用意してくれる政宗の優しさが幸村はとても好きだ。
更に料理の味も昔と同じで超一流で本当に美味しいので、毎食幸せを噛み締めながら食べている。
戦国では考えられなかった幸せだ。
しかしやはり身長の事を政宗は現代でも気にしているらしく、大抵朝食に牛乳はついた。
和食の時はお茶になるが、実はこっそり政宗が隠れて牛乳を飲んでいるのも幸村は知っていた。
そんな政宗が可愛くてしょうがない幸村だが、言ったら言ったできっとへそを曲げられてしまうのでその言葉は心にしまい込んでおく。
もぐもぐと朝食を食べながら幸村はそんな些細だが大きな幸せを考え、にこにこしていた。





「今日もバイトですね?」

「そうじゃ。」


食器を二人で片付け終わり、出かける支度をする政宗を見ながら幸村は政宗に聞いた。
今日は土曜日である。
休日なのだからゆっくりしていれば良いのにも関わらず、政宗はバイトを入れていた。
幸村と暮らす前から政宗は出来る限りバイトはしていたが(実家の仕送りは最低限にしたいらしい)、幸村と暮らすようになってもまだ政宗はバイトをしている。
曰く、幸村にだけ働かせて支えてもらうのは嫌で、かつ釈だという事らしい。
幸村としては政宗には家にいてもらいたかったのだが、政宗のプライドと律儀さと真面目さを尊重して土曜だけは働いてもらうようにしている。
幸村としては専業主夫をする政宗が本当は一番理想的だったりするのだが。


「では、すまなんだが、いってくる。」

「はい。
いってらっしゃいませ。」


幸村はそう言って微笑みながら政宗を見送った。
だが、内心気分はとてもよろしくない。
何故ならば政宗は恥ずかしがり屋な為幸村に働いている店の名前と電話番号は教えているが、その所在地は教えてくれていないからだ。
そんな政宗に心配性な幸村は、『隠したい様なやましい仕事をしているのではないのか』とか、『実は何か言えない事情とかがあるのではないか』とか考えていた。
政宗は一応まだ未成年だ。
保護すべき、そしてされるべき対象である。
無論幸村はそうでなくとも彼を守るつもりでいるが、兎に角何かよからぬ事に巻き込まれていては大変だ。
幸村はそう考えながらあまり得意ではないパソコンをつけた。
数秒後、それは爽やかな音を立てて起動した。
そしてそのまま幸村は慣れぬ手付きでインターネットを開き、ブックマークをクリックする。
すると、とある飲食店のサイトが表われた。




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