その他Novel

□ふじちゃんの嫌いな魚
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その日、紺のふくろうは博物館で魚を受け取っていた。
無論差し出してきたのは元就である。
まだ8月の初日というのに、彼はこの時期に漸く採れ始める魚と虫をもう全種寄贈しに来たのであった。
しかもあまりにも涼しい顔でそれを渡してくるものだから、紺のふくろうも少しばかり尊敬している。
気力と体力と運も、彼にはしっかりと備わっているらしい。
しかし彼はそれを渡すと、そそくさと帰ってしまった。
曰く、早く島に行きたいから、らしい。
この時期ならば普通に高価な魚や虫などは浜辺で採れる。
なのに船に乗ってまで島に行くという事は、相当銀の狼の追跡から逃れたいらしい。
彼も大変だねぇと内心ちょっぴり同情しながら、受け取った魚を見る。
早く飼育の水槽に入れてやらねばならないなとは思うものの、この奇妙な動きは紺のふくろうにとっては少々面白い。
なんというか観察しがいがあるというものだ。


「………よくあんな気味の悪いものを、少輔は正視していられるものじゃ。」


そんな紺のふくろうを見ながら若干震えているふくろうがいた。
孫の緑のふくろうである。
緑のふくろうはその魚があまり得意ではなかった。
動きからして奇妙なのに、見た目もどことなくグロテスクで、かつ噛み付くと離れないというから正直勘弁してほしい。
更に自分と同じ緑色というのも実に憎らしい。
緑のふくろうには本当に理解出来なかった。
何故あんなものが魚のくくりで採れてしまうのか。
緑のふくろうは軽く神を恨んだ。


「まぁまぁ。
近寄って触らねば良いだけですから。
ね?」


そんな緑のふくろうを赤の虎が宥めた。
何故彼がここにいるのかといえば、勿論緑のふくろうの料理を味わう為である。
今回は少し珍しい魚のタイを釣り上げてきたらしい。
そしてそれを緑のふくろうに煮付けにしてもらう為に、わざわざこの博物館にやってきたというわけだ。
そして彼は今、水面下で猛烈にとある事と戦っていた。
一体それは何なのか。
それはたかが魚に怯えるこの可愛らしい緑のふくろうを、愛でて撫でてしまいそうな衝動である。
愛でるのはまだ何とかなる。
可愛らしかったので、と正直に言えば小言で済むからだ。
が、撫でるのは子ども扱いとみなされるだろうから、赤の虎には出来なかったのだ。
緑のふくろうに子ども扱いしたと判断されれば、多分数日は口をきいてもらえないだろう。
口をきいてもらえないという事は、おまけとして手料理も食べれなくなるのである。
それだけは絶対に避けたかった。
なので赤の虎の言葉により、緑のふくろうは赤の虎と供に場所を移動し、タイの煮付けを作り始める事となった。

そして、やはり緑のふくろうはあの魚…スッポンには水槽越しであっても、出来るだけ近寄らないようにしていた。
相当苦手のようだった。

更にうっかり他の住人からスッポンを貰い手渡しされ、緑のふくろうがパニックになるのはまた別の話。



スッポン嫌い捏造したった!
深い意味はないです!
 

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