その他Novel

□ギャルソンの笑顔
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「………ご注文はお決まりですか?」


ブスッとした顔で政宗が幸村に言った。
幸村は申し訳なさそうに苦笑しながらコーヒーを頼む。
それを承った政宗は、内心恥ずかしさと怒りでおかしくなりそうな心を抑えて出来るだけ平静を保ち注文を厨房に運ぶ。
引きつった笑顔と自分のギャルソン姿など、幸村には見せたくなかった。
ギャルソン姿はまだ目を瞑れる。
確かに恥ずかしいが文化祭の、サイズがあるからと本番当日に無理矢理着せられたメイド服よりは何倍もマシだからだ。
だから店の場所は来れないように言わないでおいたのだが、まさか幸村が嗅ぎつけてくるとは思わなかった。
人望の厚い幸村の事だ。
きっと誰かから聞いたに違いない。
または可能性は低いがインターネットで検索したか。
どちらにしろ来てしまったものは仕方ない。
早く帰るのを待つばかりだ。
政宗は再び溜息を吐いた。

そう考えている政宗を伺いながら、幸村は内心安心していた。
危険な仕事ではなかったし、何かを隠しているわけでもない。
店自体も綺麗で雰囲気も良い。
それらを感じ取りながら、幸村はコーヒーが来るのを待つ。
そしてそれに加え、政宗の貴重なギャルソン姿を拝めた。
文化祭のメイド服も素敵で思わず卒倒しかけたが、これもとてもよく似合っていて凄く写真を撮りたいぐらいだ。
しかしここでやるのは恥ずかしいので、近々違う形でどうにかしようと幸村はちょっと胸をときめかせた。
そしてインターネットのサイトを教えてくれた三成に心の底から感謝する。
持つべきものは友人だ。
今度何か奢らねば。

そう考えていると、政宗が他の客と話しているのが目に入った。
引きつってはいるが、政宗は笑顔で他の客に接している。
それが幸村の胸をちくちくと刺す。
それを感じて困惑していると、政宗がコーヒーを持ってこちらにやってきた。
先程の客相手と違い、やはり少しブスッとしている。
そして店員のお決まりの文句を言い、コーヒーと注文票を置いて政宗は直様去ろうとする。
そんな政宗に幸村は寂しくなって、思わず政宗の腕を掴んだ。


「何故、私には笑って下さらないのですか?
政宗殿。
他の方には笑っておられますのに。」

「………!」


その幸村の寂しげで不満げな言葉に、政宗は驚いた。
何故なら、彼が嫉妬している事に気付いたからだ。
自分が社交辞令とはいえ、笑顔を他人に見せる事に幸村は嫉妬したのだろう。
だから自分にも笑ってほしい。
そんな思いと表情を政宗に向けてきたのだ。
あの大人な幸村が他人に嫉妬し、それを主張してくれるなどと思わなかった政宗は凄く嬉しくなった。
勝手に来て色々見られてとても不愉快だった思いが、全部その嬉しい気持ちに掻き消された。


「幸村がわしを想って他人に嫉妬するとは思わなんだ。
………嬉しいぞ。
幸村。」


政宗は笑った。
とてもとても綺麗に。
彼が出来ないと思っていた優しい笑顔で。

そしてその笑顔を見た幸村が嬉しさと政宗の美しさに卒倒し椅子から転げ落ち、それを見ていた客どころか店員までもが魅せられ、結果、土曜の集客率が上がり政宗の疲労が更に増えたのは、言うまでもない。







END?





Special Thanks
野良ユキ様


再びノリで書きました。
ネタを振ってくれたユキちゃんに感謝!
しかしネタが微妙に変わってしまった………。
そして政宗ちゃんが作り笑い苦手とか、ありえない捏造してすみませ………!
後、うちの幸村さん、へたれてるなぁ………。
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