その他Novel

□ただ只管に、貴方を想う
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話せば話す程、幸村という男は面白い男だった。
政宗のあまり好きではない戦の話には出来るだけ触れず、草木や土地の美しさ、人々の温かさ、そんな政宗の憧れる話をしてくれるのだ。
たまに現実の悲しい話もするが、それでも幸村は政宗の為に優しい話をしてくれた。
そうして毎日会う内に、政宗の心にも温かさが行き渡る。
人柄を感じる為に武術の手合わせもして、それらは更に政宗を温かくさせた。
初対面で女性と間違われたのも、今なら笑って許せそうだ。
そして幸村は政宗の成長する杖もいたく気にいってくれていた。
しかも綺麗な宝珠は貴方の心のように澄み切っている、とまで言ってきたのだ。
流石の政宗もそれにはとても恥ずかしくなって、彼を小突いたりした。

そうして気付けば、力も強く、話も上手く、顔立ちも良い優しいこの男に、政宗は心を許していた。


そんなある日、ネオネクタールから食糧を輸入している小国とネオネクタールが衝突した。
どうやらネオネクタールからの要望を聞き入れたくなかったらしい。
それはそうだろう。
食料自給率の低い国家にとって、ネオネクタールの要望は命令に近いのだから。
そして国境付近でのいざこざは戦闘になった。
政宗も守護竜に連れられ、魔法で援護したり傷付いた者達を介抱したりした。
だが、敵も味方も、傷付かない者はいない。
心も、身体も。
政宗は憂いた。
何故争わないとならないのか。
そんな政宗の気持ちに呼応するように、成長する杖の宝珠もどこかくすんでいる。

それがいけなかった。
政宗がそう考え事をしている内に敵が背後から政宗に攻撃を仕掛けたのだ。
魔法の力がいくら強くとも、政宗も生き物だった。
とっさには対応が出来なかったのである。
しかも死角の右からの攻撃だった。
防ぐ為の連弾の魔法も薙ぎ払いも、確実に間に合わない。


「しまっ………!」


ああ、殺られる。
わしもここまでか。

そう思った。
が、次の瞬間敵は消炭になって吹き飛んでいた。




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