その他Novel

□ふじちゃんの不幸な一日
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「………なんだ。
火事ではないのか。」


ぴしり
いきなり緑のふくろうの周りの空気が冷えた。
体感温度で二度は下がったと感じられる。
そして続けてため息。
勿論ため息を吐いたのは、緑のふくろうである。
米神が引きつっている。


「ああ、宗茂くん。
今日はお休みかい?」


そんな空気の中、のんびりと紺のふくろうが言った。
そんは二人の目の前には、一匹の銀の鳥。
背を扉に預け、表情を涼しげに余裕に満ち溢れた顔をしてこちらを見ている。


「いや、今日は仕事だが、博物館に煙が上がっていたからな。
火事かと思って見に来ただけさ。
少輔達に何かあったら大変だ。」


爽やかにそう銀の鳥は言う。
きらりと歯が光りそうな気がするぐらいの爽やかさ。
それに対応するように、緑のふくろうの周りの温度は更に下がった。
火事じゃない事ぐらい鳥なら分かるだろう。
そして何より銀の鳥自体が本当に気に入らない。
そんな表情をしている。

この銀の鳥は美容師である。
しかも腕が立つので、他の村から客が来るまでの人気美容師だ。
ファッション雑誌で取り上げられるのも、もう時間の問題かもしれない。
だがしかし、緑のふくろうにとっては天敵なのだ。
何故なら紺のふくろうに初めて会った時、「君とは初めてあった気がしないな。」と手を取りながら軟派紛いの事を言い、挙句近くにいた緑のふくろうには「君は娘さんか。隻眼だが綺麗な目をしている。」と緑のふくろうの頬横の髪を払い除け爽やかに言ってのけたのである。
だから嫌がらせだと緑のふくろうは思い、思い切りパンチを繰り出したが見事に避けられた。
緑のふくろうにとっては腹立たしいことこの上ない。
しかも紺のふくろうは紺のふくろうで気付いておらず「まぁ、世の中には同じ顔が三人いると言うからねぇ。」とにこやかに流してしまったのである。
この事件に緑のふくろうは酷く憤っていたので、銀の鳥を密かに敵視しているのである。

しかしそんな緑のふくろうの気持ちに気付いていない紺のふくろうは、普通に銀の鳥と会話をしている。

今日はついておらぬ。

緑のふくろうが横目で二匹を見て、かつ掃除をしながら更に深いため息を吐いた。
もう勘弁してほしい。
そんな気持ちだ。
と、そう思ったと同時に、銀の鳥が紺のふくろうの髪についた埃をさりげなく取ったのが見えた。
紺のふくろうは既に会話を半分聞き流し本を読み始めているが、どう見ても顔が近い。

その様子に緑のふくろうのストレスは最高潮になり、もう我慢出来ないとばかりに火山のように怒りが噴火した。
火山弾が飛んできそうなぐらいの大噴火である。




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