その他Novel

□蕎麦乱闘記
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――数十分後――





流石に蕎麦が伸びきった頃、やっとアレンは止まった。
背後を見ても、神田はいない。
アレンはその場に座りこんだ。

「振り切ったみたいだ………。じゃあ、いっただきっきま――――。」


―――ヒューーッ


唐突に空を裂く音がした。
その音はどんどん近付いてくる。
アレンは蕎麦を庇いながら立ち上がる。

「!!上か!!」

アレンが言った瞬間。


――ザンッ


アレンの居た所に一線、銀が走る。
間一髪、アレンは避けた。
空気が衝撃で震え、触れていないのにアレンの服が裂ける。

「か、神田!?」

「モヤシ……覚悟はあんだろうな………?」

ギロリと睨まれ、背中に冷や汗が流れる。
先程の比ではない怒りが、顔を直視しなくても伝わってくる。
怒りでその場が凍りついたように冷たい……。
地を這うような冷たい感触に、アレンの身体が震えだす。

「モヤシ………。」

神田がゆっくりと近付いてくる。
好きだからなんとか耐えられているものの、普通の相手では泣きが入ってしまいそうだ。


「……半分なら、分けてやらん事もない……。」

「え………?」

その言葉に、耳を疑った。
アレンが瞳を見開く。
まさかの一言だ。
アレンにも信じられないらしい。
何故なら、愛してるとはいえ冷徹と名高い神田が、そんな事を言っているのだから………。

「………いらないなら、返せ。」

「い、いえ!!いります!!でも、本当に良いんですか?」

「くどい。」
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